■Dosage Of Medicine -01-■



 特に用事があったわけではない。
 だが、その日。ナイトウィングはバットケイブに来ていた。

 事前に寄ると言っていた訳でもないし、ケイブに入った時、バットマンが熱心にコンピューターに向かって調べものをしていてこちらに気づかない事も予測していた。
 いつもなら、こちらから声をかけるのだが・・・
 この日はなんとなく、すぐに声をかける気にならなかった。そのままケイブの中をぐるりと見回すと、視界の端に大きなジョーカーのカードが入り込んだ。
 そのまま、足をミュージアムの方へ向ける。

 そこに展示してあるのは、今までバットマンが戦ってきたヴィランに関係するものや、バットマン自身の思い出の品。
 大きなペンギンに大きなコイン。ブルースの父親、トーマスのバットスーツに・・・ジェイソンのコスチューム。
 ナイトウィングにとっても思い入れのある物も飾られたその場所に、記憶の中にないものが置かれていることに気が付いた。
 他のものと違って、隠されるように置いてあったそれの近くに行って確認をして・・・。
「Yuck!」
 思わず声を出して後ずさり、トンッと何かにぶつかった。
「っ!?・・・あ」
 展示物にぶつかったのかと慌てて振り返れば、そこにはいつの間に移動したのか、バットマンが立っていて。ナイトウィングの肩に手を置いて。
 バットマンはナイトウィングが見つけたそれ、ドギツイ赤と青のラベルの貼られたペットボトルを手に取った。
「・・・これが、どうかしたのか?」
「えっ?あ・・・いや・・・」
「ジェイソンに渡されたのだが・・・お前は、これが何か知っているのか?」
「っ!?」
 バットマンに尋ねられ、ナイトウィングは声を詰まらせる。

 あの馬鹿!何でよりにもよってブルースに・・・!!

 バットマンの事だから、このボトルに入っている液体の成分など当に検査済みだろう。だが、ジェイソンから何を、どこまで聞いているのかわからない。
 そんな状態で下手に物を言うことも出来ず。ナイトウィングは・・・
「さ・・・さあ?海外の・・・ジュースじゃないの?」
 見た目から誰もが思うであろう当たり障りのない事を言って、その場を切り抜けようとした。
「ふむ、そうか」
 ナイトウィングの答えを聞いて、バットマンはボトルを目線に持ち上げて頷くと。
 キャップをあけてグイッと飲んでしまった。
「っ!!??」
 それに慌てたのはナイトウィングだ。
 自分は自分の意思とは関係なく、その液体を頭からかぶって。飲んだとしても少し舐めた程度だったのに・・・その数十分後には思い出したくもないような常態に陥っていた。
 その程度の摂取量でそうなってしまったのだから、そんなにたくさん飲んでしまったらどうなるか。
 慌てて吐き出させようと手を伸ばすと、その腕を捕まれ引き寄せられ。
「んぐっ!?」
 合わせた唇の隙間から、飲み込みきれなかった液体が喉を伝って流れ落ちる。
「んっ、はっ・・・・・・ブルー、ス・・・?」
「・・・これは、即効性のものなのか?」
 バットマンは、やはりこの液体が何なのかを知っていた。そして、ナイトウィングもこれの事を知っているとわかっているうえで、飲むふりをして・・・。
 嵌められた。そう思った時にはすでに液体を全て飲み干した後で。
「・・・僕も、飲んだわけじゃない。・・・前は・・・それ、被っちゃっただけだし。不慮の事故ってやつだったの!」
 なんて事をしてくれるんだ。という気持ちを込めて睨みつけ、一発殴ってやろうかと拳を握る。
 だが、不意に眩暈のような感覚に襲われ軽くバランスを崩した。
 まずい、と思った時にはすでにバットマンの腕の中で。
「どうした?」
 すっと、頬を撫でられる感覚にさえ身体は反応を示し、足はがくがくと震え、立っているのもやっとという状態だった。
「・・・・・・。」
 ナイトウィングはきゅっと唇を噛むと、バットマンの首に腕を回し抱き寄せ、噛み付くように口付けた。
「・・・責任、とってよ・・・」
 そして。間近で、潤んだ瞳で睨みつけながら言うと。
「もちろんだ」
 バットマンはニヤリと笑って再びナイトウィングの唇を塞いだ。
「んっ、あっ・・・まっ、待って、ブルース」
 唇を塞ぎながらそのしなやかな肢体に手を滑らせると、ナイトウィングは顔を横に振るようにして唇を離し、バットマンの動きを止めさせる。
 何故?とバットマンが顔を覗き込めば、ナイトウィングはぎゅっとバットマンに抱きつき、耳元で。
「ここじゃ、ヤだ・・・お願い、ベッド、に・・・あっ!」
 全てを言い終わる前に、バットマンは彼を軽々と抱き上げウェイン邸へと繋がる階段へと歩き出していた。
「んっ・・・ん・・・」
 ナイトウィングはバットマンの腕の中で身体を丸め、時折小さく声を上げる。一歩一歩、足を進める振動でさえ、今の彼には甘い痺れをもたらしているようだった。
 ふと、目を瞑っていたナイトウィングが何かに気づいたように瞳をゆっくりと開く。そして、すぐ傍にある、バットマンの逞しい胸に飾られている蝙蝠を愛しさのこもった指先で優しくなぞり、ほぅっと甘い溜息をついた。
 その、ナイトウィングのしなやかな指の動きを見ていたバットマンは、まるで自身を指先で撫でられたかの様な錯覚を感じる。
 バットマンも少量とはいえ、あの液体を飲んでいる。その影響が徐々に出始めていた。



 部屋に着くと、バットマンは少し乱暴にナイトウィングをベッドの上に降ろし。そのまま覆いかぶさるようにして彼の唇を奪う。
 角度を変えて何度もキスをして、ナイトウィングのコスチュームを脱がせていくと。コスチュームやバットマンのグローブをはめたままの指が肌を掠める、そんな些細な刺激にさえ・・・ナイトウィングは甘い声を漏らし、身悶えた。
「ブルース、ブルー、スっ、やっ、あっ・・・おかしく、なるっ・・・」
 上半身を全て脱がされた状態になっても、直接的な愛撫を与えてもらえず。ナイトウィングは涙を浮かべ、バットマンにぎゅっと抱きつくと。
「っ!?」
 体を反転させ、今度はバットマンがナイトウィングに組み敷かれる体勢になった。
「んっ・・・そんな、意地悪するんだったら・・・こっちにも、考えが、あるんだから・・・」
 バットマンの腹の上に馬乗りになったナイトウィングは、自分とバットマンのマスクを外し。ぞくりとするくらい妖しく美しい笑みを浮かべ、バットマン・・・ブルースの胸の蝙蝠にキスをした。
「・・・それが、そんなに好きなのか?」
 先ほどから、胸の蝙蝠に反応を示すナイトウィング・・・ディックに、ブルースはなにやら軽い嫉妬のようなものを感じ尋ねると。
「ん・・・好き、だよ・・・」
 ブルースのコスチュームをたくし上げながら、蝙蝠に何度もキスをしつつ、ディックは答えた。
「だって・・・ブルースの、蝙蝠なんだもん」
 彼の小さな表情の変化に気づいたのか、ディックはくすくすと小さく笑い。
 上体のコスチュームを完全に脱がせて、露になった胸に、甘えるように頬を寄せ。
「ブルースを守ってくれてる蝙蝠だから・・・好きなんだよ?」
 目の前にある、すでに立ち上がって存在を主張している小さな突起を指先で転がすと。
「くっ・・・おっ・・・」
 小さくあがったブルースの甘い声に、ディックは微笑みもう片方の突起に舌を這わした。
 そして、次第に荒くなるブルースの息遣いにディックは気を良くし。小さな突起を舐め、摘み、吸い上げ、甘く噛む。
「あっ!」
 その場所ばかりを愛撫していたディックは、知らずに揺れだしていた腰を不意に押さえつけられ、思わず声を上げた。
 ブルースは、動きが止まったディックの下半身を包み、ガードしているコスチュームの中に肌を撫でるようにして手を入れた。すると、指先にぬるりとした感覚が。
「あっ・・・あ・・・」
 恥ずかしそうにブルースの胸に顔を埋めるディックの頭を優しく撫で。ブルースが意地悪く囁く。
「これは、何だ?ん?」
「はっ、あっ・・・ああっ・・・」
 そのぬめりをディック自身や、その後ろでヒクヒクと息づくその場所へ塗り広げるように手を動かすと。ディックはその手の動きに合わせ腰を振り、甘くとろけた声を上げ。
「ベッドっ、にっ。おろされった、ときっ・・・!・・・っ、イっちゃ、た・・・んあっ!!」
 素直に答えたディックに、ブルースはご褒美だと言う代わりにディック自身が吐き出したものですでにどろどろになっていたそこを2本の指で、ゆっくりと押し広げていった。
「あっ!ああ・・・!!らっ、めっ!らめっ!!また、いっちゃ・・・!!」
 ディックは指の進入に合わせ声を上げるが。その指を全て受け入れ、奥で動かされそうになると首を横に振る。
「何度でもイけば良い」
 快楽に涙をぽろぽろと零すディックの額に、ブルースが優しくキスをして言うと。ディックは切なそうに眉を寄せ。
「やっ・・・ん・・・。僕、ばっか・・・り・・・ブルー、スもっ・・・」
 顔に何度もキスをされ、そんな事を言われ。
 それだけで、ブルースは欲望をコスチュームの中に吐き出してしまいそうになっていた。 



 一糸纏わぬ姿で、ブルースの上にディックが乗っている状態で。2人は互いの体温を確かめるように抱き合い、唇を重ねる。
 緩やかに腰を揺らせば、互いのモノが腹の間で擦れ合い、
「ん、ぁっ・・・ブルースッ・・・!!」
「一度・・・っ、イく、か・・・?」
 小さく体を震わせ、ぎゅっと抱きついてくるディック自身と己のモノを一緒に握りこみ。ブルースはその手を緩く上下に動かした。
「あっ!もっ・・・!!」
「くっ・・・」
 たったそれだけの刺激で、2人はほぼ同時に絶頂を迎え。2人分の快楽の証が下になっていたブルースの腹を汚した。もちろん、その上に重なるようにしてブルースに抱きついていたディック自身の腹も同様に。
 荒い息を吐きながら、ゆっくりと体を起こしたディックは。自分とブルースの吐き出したそれを、掌でブルースの腹を撫でるように塗りつけ。
 ゆっくりとその手を自身の唇の前へ持ってくると、うっとりとした表情で・・・まるで、子猫がミルクを舐めるかのように、ぺろぺろと手に付いているそれを舐めはじめた。
「・・・っ」
 ディック同様、達した事で荒く息をしていたブルースは。彼のそんな行動に再び自身に熱が集まるのを感じ。
「ディック・・・」
 ディックの腕を取り、寝たままの自分の顔の上を跨がせる位置へと移動させ。
「うっぁ・・・ブルース、こんな・・・あっ!」
 羞恥に顔を赤く染めるディックの太股を、逃げられないようにしっかりとホールドすると。その場所へ舌を這わせた。
 初めの内は、恥ずかしさからか小さく抵抗していたディックも。すぐにブルースに与えられる快楽に溺れ、彼の髪を掻き乱し、自ら腰を振る。
「ブルー、スッ・・・っ!あっ、はっ!・・・もっ、ぁっあっ・・・!!」
 涎でぐしょぐしょになったその狭い入口に指をあてがえば、ずぶずぶと飲み込んでいき離そうとしない。指を締め付ける感覚を楽しみながら、目の前のディック自身を舐めてやれば、ディックは背を大きく反らせ、甘い悲鳴を上げた。
「欲しいものがあるなら、言いなさい」
 触ってもいないのに、ブルース自身は完全に立ち上がっていたが・・・それを気取られないように静かな声で言うと。
「ブルース、のっ・・・っ!ちょ、だっ・・・あっ!!」
「私の・・・ナニが欲しいんだ?」
「あっ!・・・んぅっ・・・ブル、スのっ、ペニスッ、・・・んっ!」
 ディックの甘く掠れた声でのお強請りに、ブルースはゴクリと喉を鳴らす。だが、
「どこに欲しいか、言わなければわからないぞ?」
 ディックの深い場所を指先で突く様に刺激を与えながら、ブルースは彼の下から抜け出し、ディックをベッドに押し倒すと。さらに意地悪く囁く。
「んはっ!んっ!ブルースッ、いじわるっ、しなっ・・・あっ!」
 快楽に涙を浮かべつつも、ディックは自ら膝裏に片方の腕を回し、大きく足を開き、さらにその手で尻を掴みその場所を広げ。
「こ、こっ・・・っ!ぼ、くのっ、アナルにっ!ブルースの、おっきいペニス、でっ、ぅあっ!・・・ファックしてっ!掻き回し、てっ・・・!!」
 ブルースはそんなディックの姿に笑みを漏らす。普段はどちらかと言えばつれない態度のディックが、今は浅ましくも素直に、欲望に忠実に自分を求めている。その事実が嬉しくて、愛しくて、たまらない。
 広げられた足に腕をかけ、彼の体を二つに折り曲げるようにして口付けると。
「今、望むものをあげよう・・・」
 熱く、固く猛った自身をゆっくりと、ディックの胎内へと埋め込んでいった。
「うっあっ・・・!ああああ・・・!!」
 ゆっくりとした動きで進入してくる・・・太く、固く、熱い杭にディックは歓喜の悲鳴を上げ、それだけで達しそうになるが。
「ひっ!あっ!!やぁっ!」
 ブルースが、きゅっとディック自身の根元を握りこみ、それを阻止した。
「やっ、んっ!ブルース、いじわるっ!しないっでぇっ!!」
 達する事を許されないまま揺さぶられ。ディックは泣きながら、その手を外させようと手を伸ばす。
「・・・さっきから、っ・・・イきっぱなし、じゃないか」
「あっ!」
 だが、ディックの両の手はブルースの片手によって頭上に縫い付けられてしまう。
「少しは、我慢しなさい」
「やっらっ・・・!やっ!!あっ!!いかせっ、てっ!うあっ!あっ!!」
 両手と自身を押さえつけられ、涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにしながら頭を左右に振り、ディックは懇願するが。ブルースはそれを聞き入れず、さらに激しく腰を揺らし始めた。
 そのせいで、ディックの口からは悲鳴のような嬌声が溢れ出し。しばらくして、背を大きく反らせ体をびくびくと震わせた。
「うっ・・・く・・・なんだ。出しても、いないのに・・・イったのか?」
 その瞬間、ディックの胎内に納まっていたブルースのモノがキツク締め上げられ。ブルースは意地悪くニヤリと笑い。
「いやらしい、子。だ・・・お仕置きが・・・っ。・・・・必要、だな」
 内壁の締め付けに時折声を詰まらせながらも、ディックの耳元で囁く。その言葉に・・・というよりは、耳元で囁かれた声色に、ディックはぶるりと身を震わせて。
「あっ、やぁっ・・・ごめっ、なさっ・・・っ」
「・・・もう、出せないように・・・ここ、を。縛り付ける、か?」
 涙を流しながら謝って来るディックの瞼や唇にキスを落としてその場所をさらにキツク握り締めれば。ディックは頭を振って悲願した。
「ひっ!やっ!あっ!!・・・や、らぁっ!・・・出したっ!出さ、せっ、てっ・・・!!」
「フフ・・・しようのない子だ・・・」
 ブルースはそっと、ディックの両手と自身を押さえつけていた手を離すと。投げ出されているディックの足を抱えなおし。
「ならば、あと少し、は・・・我慢、しなさい・・・」
「あっ・・・!あひぁっ!!」
 一度、自身をぎりぎりまで引き抜いて。一気に奥深くまで貫いた。



 どれほどの間、2人は互いを貪り尽くしていたか、もうわからなかった。
 一度、ブルースはディックから自身を抜いて体勢を変えようとしたが。
「抜かないで・・・!」
 と切なくお願いをされてはブルースに断る事はできず・・・長い間、2人は繋がったままでいたことは確かだ。

 だが、さすがにディックが意識を飛ばし、ぐったりとする頃には。ブルースが摂取した薬の効果もほとんど抜けており。
「・・・ぁ・・・ん・・・」
 気を失っているディックを起こさないようにゆっくりと身を引いて。ブルースはディックを腕に抱いたまま横になっる。
 涙や涎・・・体液でぐしょぐしょになっているディックの顔を拭ってやり。少し、やりすぎたか・・・と反省をし始めたころ。ゆっくりと、ディックが目を開いた。
「・・・大丈夫か・・・?」
 ぼんやりと自分を見つめてくるディックの頭を優しく撫で、尋ねれば。
「・・・ブルース・・・」
 ディックはゆっくりと体を起こし、ブルースにキスをしながら押し倒す。
「・・・まだ・・・足りない・・・ブルースが、欲しい・・・」
 ベッドに押さえ付けられながら言われた言葉の本当の意味に・・・ブルースはまだ、気づいていなかった。


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