■Wanted Feelings -01-■
その日、ゴッサムシティは突然のスコールに見舞われた。
「はぁ、酷い目にあった」
バットケイブに戻ってきた、ナイトウィングとバットマンは急に振り出した雨のおかげで、ずぶ濡れの状態だった。
「・・・・なんかずるいな、バットマンはあんまり濡れてないなんて」
と言っても。その言葉が示すとおり、バットマンは羽織っているケープのおかげでナイトウィングと同じ時間だけ外にいたにもかかわらず、体は濡れてはいない。
「ならばお前もこういったものを羽織ればいいだろう?」
バットマンのケープは水を弾くので、彼は体に残る水滴を払いながらそういった。
もちろん、ナイトウィングのスーツも水は弾く。だが、やはり直接かぶるとそうでないとではだいぶ違う。
「ん〜・・・そういうの付けてると飛び辛いからなぁ」
たっぷり雨を吸った黒髪を絞りつつ苦笑し。ナイトウィングは、そのままびしょびしょに塗れたコスチュームを脱ぎ始めた。
「・・・・・・」
何気なく、その様子を眺めていたバットマンだったが・・・
ナイトウィングの体にフィットした漆黒のコスチューム。それが、背面のチャックに手をかけられ、ゆっくりと開放されていく。
白い素肌が露になり塗れた髪が張り付き、その髪から滴る雨の雫がナイトウィングの、ディックの素肌を伝い落ちる。
その様がなんともエロティックに思えて、思わず口元を手で覆い視線をそらした。
そういえば、最後に肌を重ねたのはいつだっただろう?
少なくともこの数週間、ナイトウィングはブルードヘイブンの事件にかかりっきりで。こうやって顔を合わせて会話をするのも久しぶりだった。
「・・・?バットマン?」
それに気づいたナイトウィングが不思議そうに声をかけ近づいてくる。上半身だけ脱いだコスチュームを腰に巻き、白い胸板を完全に曝け出した状態で。
「・・・いや・・・」
なんでもない。と言おうとしたバットマンの顔を、ナイトウィングが覗き込む。
「風邪でも引いた?顔が赤いよ?」
そういって、心配そうに見上げてくる青い瞳と赤い唇を目にした時。自然と、体が動いていた。
「んっ!?」
ナイトウィングの手首を掴み、その唇に己の唇を重ね、貪る。一瞬驚いて体を強張らせたナイトウィングだったが、すぐにその口付けに答えてきた。
「・・・・はっ・・・あっ・・・・・ブルース・・・?」
ゆっくりと唇を離すと、色に潤んだ瞳が見上げてくる。今すぐ押し倒しそうになる気持ちを抑え、優しく抱きしめ。掴んだ手首を動かし、自身の熱く猛った中心へと導いた。
「・・・お前が、欲しい」
「っ!!?」
抱きしめられたまま甘く囁かれた言葉と、手の内に感じる熱さと大きさに息を呑む。
「あっ・・・ダメ、ダメだよ・・・ブルース」
再び唇を合わせようとするバットマンを、ナイトウィングは何とか押し止める。
普段、自分が求めると拒むことをしない彼が難色を示すことを不思議に思っていると、腕の中でナイトウィングが小さくため息を付いた。
「今回、何の為に僕が戻ってきたと思ってるの?」
非難される様に言われて、漸くこれからやらなければならない事があった事を思い出す。
「今日は外せないんだろ?」
今日は表の顔、ブルース・ウェインとして、どうしても外すことのできない仕事が入っていたのだ。
だから、今回追っていた事件を今日までに解決させるため、ナイトウィングに応援を頼んだ。
「・・・・・・」
嫌な事を思い出した、と言わんばかりに渋い顔をしているバットマンの様子にナイトウィングは苦笑して。
「・・・でも、このままじゃ辛いよね」
バットマン自身に添えたままだった手をゆっくりと動かす、その刺激にバットマンが低く呻く。
そして、ゆっくりとバットマンに抱きつき耳元で、
「口でしてあげるから、今はそれで我慢して?」
甘く囁き、バットマンの唇をぺろりと舐めた。
「はっ・・・んっ・・・んむっ・・・」
薄暗いケイブの中に水音と甘い吐息が響く。
書類や地図が乱雑に置かれたテーブルのすぐ横に立つバットマンの足元に跪き、ナイトウィングは、その大きなモノに懸命に舌を這わせていた。
雨で髪を整えていたワックスが落ち、ナイトウィングの額を隠している。
「・・・ブルース、気持ち、いい?」
そういって、自身をゆっくりと手で扱きながら尋ねてくる顔は、前髪のせいか、いつもにまして幼く見えた。
「ああ、とても良い・・・」
そのほほを優しく撫で微笑むと、ナイトウィングもにっこりと微笑み大きく口を開け、手で支えたままバットマン自身を銜え込んだ。
「Oh...」
ナイトウィングの暖かい口内に包み込まれ、バットマンは軽く喉を反らせ声を上げた。
それに気をよくして、さらに深く銜え込む。
ゆっくりと、その形を確かめるように。自ら喉の奥まで誘い込み、そしてまたゆっくりと離れていく。
それを何度か繰り返していると、頭を撫でるように添えられていたバットマンの手に少し力がこめられ。バットマン自身もナイトウィングの動きに合わせるように腰をゆらし始めた。
「うぐっ・・・んっ・・・」
喉の奥を突くと、流石に苦しそうな声を漏らすが。それでも嫌がるそぶりは見せずむしろ貪欲に舌を這わせてくる。
「くっ・・・おっ・・・」
あと少しで最高の快楽を味わえる・・・!と言うところまできて、ふと、軽やかな足音が近づいてきていることに気が付いたバットマンは。
「ふぐっ!!?」
ナイトウィングの頭を押さえ込みケープの中へ隠すように包み込んだ。
「バットマン?いるの?」
それから数秒もたたずして、ウェイン低からの隠し通路の出入り口からひょこりと少年が顔を出した。
「・・・ティム」
少年、ティムは学校から帰ってきたばかりのようで、ロビンの姿ではなく普段着のままだった。
「・・・?ナイトウィングは?」
今朝、ここを発つときはいたはずの兄弟子の姿が見当たらず、きょろきょろとケイブの中を見渡す。
ティムのいる場所からは、バットマンの足元はテーブルに隠れて見えていないのだ。
「ああ、今、彼には調べ物をしてもらっているんだ」
「ふぅん、そっか」
その答えに何の疑いも持たずに納得したティムに、バットマンは続ける。
「ティム、すまないが・・・っ」
「ん?何?」
何かを言おうとしたとたん声を詰まらせたバットマンに、ティムが不思議そうに尋ねる。
「・・・っ。いや、私はまだ少し調べる、事があるのでな。もうしばらくしたら。上に上がるから。アルフレッドに、準備をしておいてくれと・・・っ」
「Okay,わかった!」
バットマンに頼み事をされた事がよほど嬉しいのか、ティムはにっこり笑うと、再び隠し通路を駆け上がっていった。
「・・・・・くっ・・・・あっ・・・・」
ティムの足音が聞こえなくなってからしばらくして、バットマンは小刻みに肩を揺らす。
「・・・・っはぁ・・・・はぁ・・・・」
肩で息をし、少しだけ後ずさると、
「んっ・・・」
ケープの中から現れたナイトウィングも、膝を付いたまま肩で大きく息をしていた。
「・・・・・ひ、どいじゃない、か。ブルース・・・」
口ではそう言ってはいるが、白く汚されたその顔はうっとりとしていた。
ケープの中で頭を押さえられ身動きが取れなくなったナイトウィングは始め、勢いよく喉の奥まで差し込まれたモノによって息が出来ず。
苦しさのあまりバットマンの太ももにきつく爪を立てたが・・・
バットマンがティムと話している間に何とか呼吸を整え。お返し、とばかりにどうにか動かすことが出来る舌だけでバットマン自身を刺激した。
すると、頭上から聞こえる話し声が息を詰まらせはじめ・・・
「・・・っ!!?」
足音が遠ざかっていくのが聞こえたと思った瞬間、頭をしっかりと固定されニ、三激しく喉の奥まで突き立てられ、次の瞬間。
「・・・っ・・・んっ・・・・・」
直接喉に熱い物が流しこまれ、それを懸命に飲み込んだ。
それでも、飲み込みきれなかった分が口の端から流れ落ち、顎を伝って露にしている胸まで流れ落ちた。
それから、バットマンがゆっくりと腰を引き。口の中に納めていたモノが離れていく。
歯を当てないように大きく口を開いて、それが離れていくのを大人しく待っていたナイトウィングの顔に、まだ中に残っていた白濁が降りかかる。
そして、暗いケープの中にいた彼は漸く。明るい場所に出ることが出来た。
「・・・はぁっ・・・・すまない、ディック・・・」
流石に、手荒なことをしたと自分でも思っているのか。バットマンは謝りながらナイトウィングに手を貸し、支えるように立たせると。その顔にかかった己が吐き出した欲望を舐め取り・・・再び唇をあわせ深い口付けを交わした。
バットマンを上へ送り出したあと。一人残ったナイトウィングは仮面を外し大きなため息をつく。
「どうしよう・・・これ・・・」
情けない表情でそう呟いたディックは、股間に感じるぬるりとした嫌な感覚に顔を顰め、再び大きなため息をついた。
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