タイムリミットはあとわずか。 今日はタワーにナイトウィングが来ている筈だ。彼に聞けば、何かヒントが得られるかもしれない。 スターファイアーやサイボーグと話をしていた彼を見つけ、少しいいか?とスーパーボーイはナイトウィングと二人だけにしてもらった。 他に人がいないことを確認して、話を切り出す。 すると、彼は顎に手を添えて考えるような仕草をして。 「ロビンが・・・欲しがりそうなもの・・・か」 と呟いた。 そう、今日はロビン・・・ティムの誕生日だ。 前々から何か送ろうと思っていたのだが、何がいいのか検討もつかずとうとう当日になってしまった。 「本人に聞いてもぜってぇ教えてくれねぇし・・・」 「まぁ、そうだろうね」 スーパーボーイの言葉に、ナイトウィングは頷き、苦笑した。 「で、貴方なら何かいいアイディアあるんじゃないかと・・・」 バットマンの方がずっとロビンと一緒にいる時間は長いが。あの偏屈親父がそう簡単に教えてくれるはずもないだろう・・・というか、話を聞いてくれるかどうかさえも怪しい。 申し訳なさそうに、年齢の割りに大きな体を小さくして、上目遣いに尋ねてくる少年の頭を、ナイトウィングは優しく撫でた。 「そうだね・・・でも、そういうのって。一生懸命自分で考えて選んだプレゼントの方が、相手は喜ぶんじゃないかな?」 「けど・・・ほんとにどういうのが良いかわからなくて・・・」 ナイトウィングが言う事はもっともなのだが、プレゼントの方向性さえ一向に決まらなくて。 ・・・実は、YJの時にネタを詰め込んだプレゼントを贈った事はあったが。今回はちゃんと、ネタではなくてプレゼントをしたかった。 「ん〜・・・じゃあ、ヒントをあげよう」 しょんぼり、とした雰囲気のスーパーボーイに。ナイトウィングはチャーミングなウィンクを投げて。 「あの子は結構実用的なものを欲しがるよ?普段から使えそうな物から探してみたらどうかな?」 「実用的・・・?」 「あ、ちょっとごめん」 もう少しヒントが欲しくて、粘ろうとするものの。ナイトウィングが持つ通信機のアラームが鳴り出した。 「・・・ごめん、行かなくちゃ」 通信機の向こうの相手と2、3言葉を交わしたあと、ナイトウィングは申し訳なさそうにそう言って。スーパーボーイの頭をもう一度撫でて部屋を出た。 「あ〜・・・ぜんっぜんわかんね・・・」 ナイトウィングが出て行ったドアを見つめながら、スーパーボーイはテーブルに突っ伏して呟いた。 しかし、そうしている間にも時間は過ぎて、プレゼントを買えそうな店は閉まってしまう。 とりあえず、街に出て探してみることにした。 「・・・これは?」 日付も後数分でかわる、そんな時間。 タワーの廊下でようやく捕まえたロビンに、それこそアメリカの街中探し回って選んで悩んで悩みつくして用意したプレゼント。 それを手渡した時の第一声がそれ。 「あ・・・その・・・今日、お前の誕生日だろ?」 物凄く喜ぶ、という様子は期待していなかったが、それにしたって反応が薄すぎやしないか? そんな事を思いながら・・・自分では意識していないのだが・・・捨てられた犬のように、上目遣いに相手を見ていると。 大きいとはいえないプレゼントを眺めていたロビンが、ニヤリと笑ったように見えた。 「まぁ、ありがたく貰っておくよ」 そう言ってケープの中に渡したプレゼントをしまうと、ロビンはスーパーボーイに背を向けて歩き出した。 「え?あ、ちょっとまっ」 そのまますたすたと先を行くロビンの後を慌てて追いかけるが、ロビンは足を止めようとしない。 だが、スーパーボーイについてくるなというわけでもないところを見ると、悪い気はしていないようだ。 しかし、それに気づいていないスーパーボーイは何か機嫌を損ねるようなことをしたかと慌てている。 そんな彼の様子がおかしくて、ロビンは再び、気づかれないように小さく笑った。 それから数時間後。ロビン・・・ティムは自宅に戻り、自室に入ると。 まずは窓とカーテンを閉め、誰にも部屋の中を見られないようにして。 コスチュームを脱ぐのもそこそこに、受け取ったプレゼントをあけた。 「・・・何考えてんだ?あいつ」 きれいに包装されたプレゼントの中身は、乙女チックな装いの栞。 金のプレートに、まるでステンドグラスのように色ガラスがはめ込まれたそれは、男が持つには少々繊細過ぎる物のような気もした。 「・・・にしても・・・」 スーパーボーイ=コナー・ケントは同姓の自分から見てもかなり体躯の良い男だ。そんな彼が、どんな顔をしてこれを選んで。レジに並んで買ってきたのだろうと考えると、思わず吹き出してしまう。 しばらくの間、それを手に持ったまま裏表を返して眺めていたが。ふと、部屋の明かりにそれを透かしてみた。 「・・・きれいじゃん・・・」 それからまた、数週間が過ぎたタワーの休憩室で。 それぞれ思い思いに過ごしているメンバーの中に、ロビンもいた。 彼はソファーに腰掛けながら、分厚い難しそうな本を読んでいたのだが。タワー内にアラームが鳴り響くと瞬時にその本を閉じてモニタールームへと走っていった。 もちろん、他のメンバーもそれに続いたが。ふと、スーパーボーイはロビンが読んでいた本がテーブルに置かれたままで、その本に挟まれていたものに気が付いた。 「あら、何か良い事あったの?」 少し遅れてモニタールームに入ったスーパーボーイにワンダーガールが声をかける。 「いんや、別に」 スーパーボーイはにっと歯を見せて笑いそう言った。 END 2009/07/19 |