■Wounded Of Red Bird■



「いでっ!いででで!!!いてぇって!!!・・・もっと優しくしてくれよぉ・・・」
「何言ってるんだよ。十分優しくしてやってるだろ?」
 夜のとあるロフトの一室。
 普段は会話らしい会話も聞こえないその場所が、この日はなにやら騒がしかった。






「ったく。一体何やってその状態なんだよ・・・」
 パタンと、一般家庭にあるよりも物々しい救急箱の蓋を閉め。部屋の主、ディックが愚痴るように呟くと。
「ん〜・・・原因色々ありすぎてわかんねぇや」
 と笑って言葉を返したのは、ディックの弟のような存在のジェイソンだ。



 数時間前、いつものように街をパトロールしていたナイトウィングは、路地裏に消えていく見慣れた影を見た。
 また何かやらかすつもりなのか?と警戒をしたが、その動きが・・・いつもと違う事に気が付いて。ナイトウィングは静かにその影の後を追った。

 袋小路になったその場所に、レッドフードはうずくまっていた。
 この場所までどうにか歩いてきたものの、もう一歩も足を動かせそうになかった。
 正直、ここまでどうやって来たのか覚えておらず、この場所が何処なのかもわからない。

 ああ、俺ももう終わりかな・・・

 そんな事を考えながら意識を手放す直前に、誰かに名前を呼ばれて温かいものに包まれたような気がした。



 レッドフードの後を追ったナイトウィングは、袋小路でうずくまって何度名前を呼んでも目を覚まさず、動かなくなった彼を抱き上げ。自分が拠点にしているロフトまで連れて帰ってきた。
 ジェイソンは一度死んだ人間だ。病院へ連れて行くことは出来ない・・・。
 ゴッサムで世話になっていたレスリーの所へ連れて行ければいいのだが、ここからでは遠すぎる。
 急いで消毒を済ませ、まずレッドフード・・・ジェイソンの服を脱がせ、傷の状態を確かめる。
 左肩に銃創、弾が貫通した様子はない。
 そして、胸と背中に刃物で斬り付けられたような傷。

 この傷はそれほど深くない。だけど縫合はしておいた方がよさそうだ。

 どれほど時間が経ったかはわからない。
 残すは弾を取り出した肩の傷を縫合するだけ。
 そんな時に、ジェイソンは目を覚まして騒ぎだし冒頭に戻るというわけだ。
「出血多量で気を失ってたんだから。暫く横になって休んどけよ?」
 体を起こそうとしていたジェイソンをベッドに寝かしつけ、その額に濡れタオルを乗せてぴしゃりと言うと、ディックは先ほどまで使っていた医療器具を、必要なものだけ残して片付け始めた。
 そして、漸く一息ついた頃。
「・・・しまった・・・」
 ここの所忙しくて、溜めていた洗濯物を一気に洗ったばっかりで。今、とりあえずでも自分が着るものがないことに気が付きどうしたものかと頭を掻いた。
 洗濯物が乾くまで着てすごそうと思っていたスウェットは、ジェイソンに着せてしまったし・・・。
 と、寝室に戻ってみれば、多少魘されながらもちゃんと言われたとおりに・・・というか起きて動き回る気力もなかったのだろうが・・・寝ているジェイソンの姿。
 額から落ちた濡れタオルを、もう一度冷水に浸して搾り、額に乗せてやった時。ふと、彼が上を着ていないことに気が付いた。

 まぁ、包帯だらけで熱いのかもしれないけど・・・風邪引くぞ?

 そんなことを思いながらも、ベッドの脇に落とされたソレを見つけて拾い上げ。
 何もないよりはましか・・・と、今夜はソレを着て過ごすことにした。
 明日になれば干している洗濯物も乾くだろう。






 ソファーで毛布に包まり眠っていたディックは、肌寒さと、雨の音で目が覚めた。
 時計を見れば朝の7時。窓の外はどんよりと分厚い雲に覆われた空に、大粒の雨。 
 今日は昼間の仕事は入っていなかったが、これでは洗濯物も乾かない・・・と部屋の中に干していたズボンを触ってみれば、案の定しっとりと湿ったままで。
 仕方ない、と小さく溜息をついて。彼は二度寝はせずに寝室へ向かった。
 ベッドの上には昨夜と同じように、眠っているジェイソンの姿。ただ、熱は下がったのか。昨日ほど辛そうな様子は見受けられなかった。
 起こさないようにそっと額に触れて、熱を診る。やはり熱は下がっているようで、ディックはほっと小さく息を吐いた。
 それから、とりあえずは何かを食べさせないと・・・とキッチンに向かい、朝食を作る事にした。



 栄養たっぷりのシリアルに、目玉焼きに、少し部厚めに切って焼いたベーコンに、たっぷり野菜のサラダ。オーソドックスなブレックファーストの準備をして。オレンジジュースを取り出そうと冷蔵庫の中を覗き込んだ瞬間。
「うわぁっ!!?」
 いきなり後ろから抱き締められて驚いて悲鳴を上げた。
 だが、その相手に攻撃をすることはなかった。なぜなら。
「・・・ディッキー・・・腹へったぁ」
 腰に手を回し、背中にべったりとくっついて情けない声を口からも腹からも上げたのはジェイソンだ。いくらなんでも、怪我人に手をあげるようなことはしない。
「だから今準備してるだろ?ほら、そんなくっついてたら動けないじゃないか」
 だが、そのままくっつかれていても邪魔なので、そう言って椅子に座らせた。

 ジェイソンの食べっぷりは、予想以上だった。
 血が足りないから・・・という理由だけでなく、数日ちゃんと食事を取っていなかったのではないか?と思えるほどにがっついて食べているので。
「僕はシリアルだけでも十分だから」
 と、ディックは自分の目玉焼き等も食べさせる事にした。もちろん残そうとしていたサラダもちゃんと食べさせた。
 朝食が終わって、後片付けをしていると。ジェイソンはテーブルに頬杖をつきながらぼんやり、と食器を洗っているディックの後姿を見つめ。
「なんかさ〜・・・」
「ん〜?」
「こうやってると、俺ら新婚みたいだな」
 上機嫌で言われた言葉に、ディックはいったん手を止める。
「・・・馬鹿なこと言ってないで、痛み止め飲んだならさっさとベッド行け」
 だが。すぐに盛大に溜息をついて、再び食器を洗う手を動かした。
 いつもなら一発殴ってやるところなのだが。やはり怪我人相手となると、どうにも強く出ることが出来ない。
 そんなディックの心の内を知ってか知らずか、ジェイソンは殴られないことを良いことに・・・。
「俺さ、まだ腹減ってるんだ」
「っ!?ジェイソン!?」
 洗い物をしているディックを背後からぎゅっと抱きしめるようにして。露になっている太腿や、スウェットの中に手を伸ばし。
「だからディッキー食べさせて?」
 と、耳元で甘えるように囁き。味見をするかのように、目の前の白い首筋をべろりと舐め上げた。
「こっ、の・・・調子に乗るな!!」
「ぎゃん!!」
 しかし流石にそこまですると、ディックも抵抗を見せる。
 背にくっついているジェイソンの腹に、思い切り肘鉄を食らわせる。すると、彼は短い悲鳴を上げて腹を押さえてうずくまった。
 暫くそのまま放置して、洗い物を再開させていたのだが・・・
 いつもならすぐに復活して文句を言ってくるのに、今回はそれがない。
 もしかして、傷が開いた?と少し焦って。食器を洗うのを中断して振り返れば、いまだうずくまったままのジェイソンの姿が目に入る。
「ちょ・・・大丈夫か?」
 慌ててその肩に手を置いて覗き込めば、悪戯が成功した子供のようにニヤリと笑ったジェイソンと目が合い。騙された!と思った瞬間にはもう、腕をつかまれキッチンの床に押し倒されていた。
「んっ!?んーーーーーー!!!!!」
 そのまま唇を塞がれて、舌を差し込まれる。押さえられていない右手でその肩を押し返そうとするが、伸ばした手に触れたのは包帯に包まれた左肩。
 そこで、さっきから左手をあまり使っていない事に気が付き。
「んっ、はっ・・・っ止めろジェイソン!傷開くぞ!?」
 唇が離れた瞬間にその顎を押し返しながら叫んだ。
 それでも、ジェイソンも負けじと顎を押し戻しながら。
「あんだけ誘っといて・・・今更・・・」
「僕がいつ誘った!!」
 まったく退こうとしないジェイソンの言葉に怒りをぶつけるようにさけぶと。不意に、彼は驚いたような顔をして動きを止めた。
「・・・アンタそれ、マジで言ってる?」
 そして、本当に真剣な顔で尋ねてくるので、思わず気圧されして抵抗する事を忘れてしまい・・・
「・・・あ・・・当たり前・・・」
「ディッキー・・・そりゃ無防備すぎるぜ?」
「いっ!?」
 その隙を突いて、ニヤリと笑ったジェイソンはディックのインナーの中に手を入れ、その場所をぎゅっと握った。
 少し強めに握られた所為で、ディックは思わず身をすくめる。だが、ジェイソンはそのままその場所をゆっくりと扱き出し。
「な〜・・・いいだろ?」
 瞼や目尻にキスをしながら、甘えるように囁いてくるジェイソンをどうにか押し返そうとするが、巧みに自身に刺激を与えられ、うまく力が入らない。
「やっだ。や・・・っ!・・・おまっ、昨日あんな、状態だったのっに、良くっ、そんな・・・」
 それでもどうにかこの状況から逃げ出そうともがきながら睨み付けるが。
「ん〜?・・・ほら、人間って死にそうな時ほどこっちが元気になるって言うじゃん」
 ジェイソンは気にした風もなく無邪気に笑い、だから、大人しく相手して?と言うかのようにさらにディック自身を扱きあげた。
「んやっ!やっ!あっ!ッ・・・ジェイソッ!!」
 流石に、ダイレクトな刺激を与えられればディックもそれに反応してしまう。
 もともと快楽に流されやすい彼だったが、それでも頑なに首を横に振っていると。
「・・・なぁ・・・そんなに俺とするの、嫌?」
 不意に手を止め。まるで、捨てられた子犬のような切なげな表情でじっと見つめてきた。
 ディックは、ジェイソンのこの顔に弱い。
「そ・・・それは・・・だって・・・」
 ジェイソンの事は嫌いではない。むしろ好きだ。だが、それはもちろん弟としての話。
 じっと見つめられ、居心地が悪くなって視線をそらしながら何とか逃れる理由を考える。
 だが、口から出たのは。
「まだ、洗い物終わってないし・・・」
 と言うなんとも情けない理由だけだった。
「んじゃ、さっさと終わらせちまおうぜ」
 そんな物の言い方では、それが終わればしても良いと言っている様なもの。もちろんそんなチャンスをジェイソンが逃がすはずもなく。
「わっ!?ばかっ!傷開く!!」
「アンタが暴れなきゃ大丈夫だって」
 ディックをひょいと抱き上げ、シンクの前に立たせ。
「俺も手伝うからさ」
 と、ディックの背中に張り付く形で、ジェイソンは鼻歌交じりに食器に付いた泡を流し始めた。
「うぁ・・・」
 上機嫌なジェイソンに対し、その腕の中に抱きこまれているディックは気が気ではなかった。
 なるべくゆっくりと残りの食器を洗っていたが、ジェイソンはそれを咎める事もなく。自分ができる事がなくなると、そのままディックの腰に手を回して、ぎゅっと抱きついた。
「な・・・なぁ、ジェイソン?」
 抱き付かれる事自体は・・・確かに邪魔ではあるが、それほど問題ではない。問題なのは、廻された手が下腹部を撫でる様に動いている事と、押し付けられている下半身にあった。
 確かに今、自分はズボンを履いていないが・・・まさかジェイソンがここまで反応するとは思ってもいなかった。抱きつかれ、ぐりぐりと押し付けられているソコは。勘違いでは済まされないほど、熱く、固くなっている。
「・・・なんか・・・当たってるん・・・だけ、ど・・・っ」
「そりゃ、当ててるしな」
 恐る恐る尋ねれば、悪びれた風もなく返され。更にインナーの中に手を入れられ、ディック自身のぎりぎりの場所をスイッと撫でられ息を詰まらせる。
 そして、とうとう最後の食器を洗い終わってしまい。
「もう、いいよな?」
「ひっ!?」
 それを確認したジェイソンの手が、ディックのインナーを引き摺り下ろし、股の間に挟ませるように、自身の熱く猛ったモノを差し込んできた。
「お、おまっ!まさかこのまま!?む、むり!無理だぞ!!?」
 慌てて、シンクに身を乗り出すようにしてジェイソンから距離をとろうとするが・・・そうやって上半身を倒す事によって、尻を突き出す形となっている事に本人は気付いていない。
「わかってるって、ちゃんと慣らさなきゃ、だろ?だからこれ」
「ひゃ!?」
 ジェイソンはあるもののビンの蓋を開け、その中身を突き出されている尻に垂らした。
 トロリとしたその液体の正体は、キッチンに置いてあったオリーブオイル。
「いッ!っ・・・!!」
 ジェイソンはオリーブオイルをディックのその場所に塗りこみ、3本の指を挿入させる。オイルの影響で滑りが良くなったその入口は、抵抗もできずに受け入れるが。中はキツク、その指を締め付けていた。
「やだっ!やっ・・・・だっ、めっ・・・っ!」
「なんだよ、洗い物終わったらしてもいいって言ったじゃん」
 ジェイソンは、そう拗ねたように言いながらも。ディックのその場所をぐちゅぐちゅとかき回し、時にはゆっくりと抜き差ししている。
 しても良いなんて言ってない!!と叫んでやりたかったが、口を開けば情けない声を上げてしまいそうでキュッと唇をかみ締めた。
「そろそろいいか?」
 胎内に差し込んでいた指を抜き、その手をそのまま太股に回し、片足を上げさせ。その場所に熱く、固く猛った自身を押し付ける。
「あっ!?だめっ!ジェイソンッ!!」
 ディックが押し入られる感覚に首を横に振って叫ぶと、珍しく、ジェイソンは動きを止めた。
「何でそんな嫌がるんだよ・・・」
 その場所に自身をこすりつけながらも、ディックの背に抱きついたまま寂しそうな声を出すジェイソンに、ディックは戸惑いながらも。
「だ・・・だって・・・お前、怪我してるん、っ・・・だぞ?・・・あ、あんまり、無茶したら、また・・・」
 先ほどまで散々胎内をかき回されて、本当ならもっと強い刺激を求めても良いくらい、高められてはいたのだが。うっすらと涙を浮かべ、頬を薄紅色に染めながらも、ディックはジェイソンの体の心配をしていた。
 それを聞いたジェイソンは、一瞬驚きに固まっていたが。甘えるように首筋や耳の裏に何度もキスをして。
「んじゃあ、傷ひらかねぇように協力してくれよ。な?」
「きょうりょ・・・あっ!やっ!!!」
 ゆっくりと、ディックの胎内へ自身を突き入れていった。

 シンクに手をかけた状態で。背後から片足を抱えられ、ゆっくりと、何度も突き上げられる。
「ほら、アンタも動いてくれよ」
「んぁっ・・・む・・・無茶、言うっなっ・・・あっ・・・」
 楽しそうな声色で、そんな事を言われるが。こんな不安定な状態で動けるはずもなく、ディックは力なく首を横に振る。
「俺はあんまり動いちゃダメなんだろ?だったら、アンタが動いてくれなきゃ」
 ジェイソンは自身を全てディックの胎内へ埋め込んだ状態で、抱えていた足を下ろして今度は腰をしっかりと押さえ込み。
「ま、俺はこれでも十分気持ちイイけどな。けどアンタは・・・足りないんじゃねぇの?」
 ぐりぐりと奥の方を押し上げながら意地悪な声色で囁く。
 その声にぶるりと体を震わせ、ディックは涙を浮かべ身を捩る。
「そっんな・・っ・・・」
 確かに、ジェイソンの言うとおり・・・すでにこんな緩い刺激だけでは満足できなくなっていた。だが、だからと言って、ジェイソンに激しい動きをさせるわけにもいかない。
 暫くの間、どうにか耐えてはいたが・・・耐え切れなくなって、ディックはゆっくりと腰を揺らし始めた。
「んっ・・・あっ・・・あっ!?」
 だが、それに気付いていないはずはないのに、ジェイソンはゆっくりと腰を引いてディックから離れた。
 卑猥な音を立ててジェイソンの太く硬いモノが抜け落ちる感覚に、ディックは体を震わせ、思わず残念そうな声を漏らしてしまい。ハッとして振り返る。
 すると、テーブルに腰掛けて腕を組み、ニヤリといやらしい笑みを浮かべたジェイソンと目が合った。
「さっきの体勢じゃ動けねえんだろ?だったら、アンタの動きやすいようにしてくれよ」
 ジェイソンはそのまま、テーブルに手をついて。先ほどまでディックの中に深く刺さっていた自身を見せ付けるように扱きだす。
 その光景に、ディックは息を呑む。
 その、太く、固く、熱いものでもっと激しく、中を擦って欲しい。そう思ってしまい、気付けば、ジェイソンが座るテーブルに手をつけて、唇が触れそうなほど傍にきていた。だが。
「こ・・・ここで?」
 ジェイソンは、この、テーブルの上で事を進めようとしている。流石にそれには理性が抵抗を見せる。
「ベッドまで・・・ガマン、できんの?」
 しかし、心の中を見透かすように、ジェイソンは笑って。
「・・・・・・。」
 ディックは、さっきから好き勝手言ってくれる唇に腹いせとでも言うかのように激しい口付けをお見舞いすると。そのままテーブルに膝をかけて乗りあがり、ジェイソンに跨った。
「ほら・・・早く一緒に気持ちよくなろうぜ?」
 その腰に、ジェイソンが手を添えると。ディックはゆっくりと腰を下ろしていき・・・。
「んぁっ!はっ・・・あっ!ああっ!!」

 不安定なテーブルの上では、なかなか達するまでの刺激を得ることができなかったが。時折ジェイソン自身もディックを下から突き上げ、着たままのスウェットの中に手を差しいれ、胸の突起やディック自身を扱きあげ。
「あっ!?だめっ!ダメッ!!ジェイソッ、ッ!!!」
「うぉっ!!」
 達した瞬間2人は互いの体を強く抱きしめあった。
「なぁ・・・なぁ。もっと・・・」
 荒い息を吐きながらも、ジェイソンは更にディックを貪ろうと目の前の首筋に舌を這わせ、耳元で囁く。
 すると、ディックは体を震わせ。同じようにジェイソンの耳元で。
「・・・ここじゃ、ヤ・・・ベッド、に・・・ひっ!?」
 ディックの囁きを聞いた途端、ジェイソンは繋がったままテーブルから降り、そのままベッドルームへと向かった。

 繋がったまま、どさりとベッドに寝かされ。ディックは眉をひそめる。
「おまっ、こんっ、な、無茶してっ・・・」
 だが、ジェイソンはケダモノのように荒々しい口付けをすると。
「アンタが・・・アンタが、あんなかわいい事言うから悪いんだぜ?」
 ゆらゆらと腰を揺らしながらそう訴え、ディックの足を抱えあげると、ぎりぎりまで自身を引き抜いて、再び強く、突き上げた。






 目が覚めると、太陽の光はすでにかなり傾いていて。時計を見ればもう夕方の5時だった。慌てて体を起こすが、腰のだるさに再びベッドに突っ伏した。
 そこで、玄関の方からなにやら話し声が聞こえていることに気づく。
 誰かきたのか?そう思い、ふらふらとしつつも寝室を出ると。
「お?ディッキー起きた?」
 玄関口からピザの箱を2つ抱えたジェイソンが戻ってきた。
「俺腹減っちゃってさ〜、ディッキー寝ちゃってるし・・・勝手に頼んだんだけど。アンタも食う?」
 どうやら洗濯物は乾いていたらしい、ジェイソンはジーンズにティーシャツといった姿で、たった今、届いたピザを受け取ってきたようだ。
「・・・うん・・・食べる・・・けど」
「けど?」
 何かを考えるように言葉を濁すディックに、ジェイソンは先を促す。すると。
「何で僕はこんな格好なわけ?」
 ディックは今、少し大きめのティーシャツを一枚だけ着ている状態だ。これでは、スウェット一枚の時と大して変わりがない。
「うん、ディッキーやっぱ足出してる方がいいって」
 ジェイソンは嬉しそうに笑いながら、ソファーの前にあるローテーブルにピザを置いて、まるで我が家のように冷蔵庫からコーラを取り出しグラスを二つ用意した。
「って言うかお前・・・大丈夫・・・なの、か?」
 ディックは嬉しそうなジェイソンの様子に、大きなため息をついて。干しておいたショートパンツを履きながら尋ねると。
「んあ?・・・ああ、あんなもん。メシ食って寝りゃすぐ治るって」
 ピザを一切れ手に持って、口に入れようとしていたジェイソンはそう笑って返した。
「・・・・・・食べ終わったら包帯交換するからな」
「別にいい・・・」
「ダ〜メ」
 隣に座って、軽い文句を言うジェイソンの様子に。これなら本当に心配は要らなかったかもしれないと苦笑して。ディックもピザを口に運んだ。



END

                                 2009/05/31














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