■Little Protege -Side T-■



 ティム達が帰ってきて、一晩たった次の日も。僕達・・・ブルースと、アルフレッドと、僕・・・の姿は、元に戻る様子はなかった。
 バットマンも、スーパーマンも、自分の基地やJLAの本部で色々調べたりもしていたけど、それでも・・・有力な情報は得られないまま、日々が過ぎている感じだった。

 そんなある日。
「ねえディック、今夜は僕の部屋に来ない?」
 パトロールから帰ってきて、そろそろ休もうか、とケイブからウェイン邸に戻る途中で。
 ティムにそう声をかけられて。僕は特に何も考えずに、
「いいよ」
 と答えた。
 だって、特に断る理由もないし。前から一緒に寝ることは良くあったしね?
「・・・・・・ティム、少しいいか?」
 もう少しで暗い階段を出る、と言う所まで来て。不意に、バットマンがティムを呼んだ。
「今行く。・・・ディック、先に部屋に行ってて?」
 ティムはすぐに返事をして、僕にそう言ってから階段を駆け降りて行った。
 なんだろう、何か調べ残しでもあったのかな?
 少し気になりはしたけど、僕は呼ばれてなかったから。そのまま暗いトンネルを抜けて、ウェイン邸に出た。






 ティムが自室に戻ると、部屋の中は電気がついたままで明るかったが・・・。
「ディック?」
 ベッドの半分を空けた状態で、ディックはシーツに包まりすやすやと寝息を立てていた。
 電気を消して、静かにベッドの上に上がり、そっと顔を近づける。
 穏やかなその寝顔は、起きている時と同じくらい可愛らしかった。
 さらに顔を近づけようとした時、ベッドがギシリと音を立てる。
「んっ・・・」
 その音の所為か、偶然か、ディックは小さく身じろいで、ゆっくりと瞳を開けた。
「ティム・・・?」
「ごめん、起こしちゃったね」
 眠そうに目を擦りながら体を起こそうとするディックを優しく制止し、自身もシーツに潜り込む。
「ティムが帰ってくるまで、起きてようと思ってたんだけど・・・」
 並んで横になりながら、申し訳なさそうにそんな事をいわれ。ティムは微笑みディックの髪を撫でた。
「そのまま寝てて良かったんだよ?」
 その時、ティムの手がディックの頬に軽く触れ、ディックの体がほんの少し震えた。
「ティムの手、凄く冷たいね」
「今夜は寒かったしね・・・」
 春はもうきているはずなのに、ここ数日の朝夕の冷え込みは冬と同じで。パトロールに出ているとき、息が白くなるほどだった。
 ディックは布団の中で丸まっていたから体が温まっているが、ティムは先ほどまで、ただでさえ冷えるケイブにいたのだ。
 その手が冷え切っていてもおかしくはない。
 ディックはティムの冷えた手を温めるようにぎゅっと握り締めた。
 そうやって手を握られて、初めて。ティムはディックの手が自分よりも小さい事に気付いた。背も自分よりも小さくなっているし、当然なのだが・・・。
「ねぇ・・・ディック」
「ん?・・・何?」
 ティムの手を握ったままウトウトとし始めたディックに、ティムは優しく声をかける。
「寒いから、もう少しくっついてもいい?」
「・・・うん、いいよ。・・・おいで」
 そんなお願いにも何の警戒心も持たずに返事をするディックに、ティムは内心苦笑して。自分より少し小さな体に腕をまわし、ぎゅっと抱きついた。
「ディック、あったかい・・・」
 胸元に顔を埋めるようにして抱きついたので、ディックはティムの頭を抱え、優しく撫でた。
 そうやって密着すると、ディックの匂いに包まれる。

 良い匂いだな〜。

 などとぼんやりと考えていると。ふと、ジェイソンが匂いでディックに気付いた事を思い出し。ちょっと嫌な気分になった。
 あの時彼が言っていた言葉は、自分も理解できる。
 つまり自分も彼と同類なのだ。
 彼に対して盛った犬などと言ったが、自分も彼と同じ、ケダモノだ。

 ディックの体を抱きしめたまま、暫くの間そのぬくもりを堪能していたティムは。ゆっくりと手を動かす。
「うひゃっ!?」
 ほんの少し、パジャマをめくって素肌に触れれば。その手の冷たさにディックが小さく悲鳴を上げる。
「ティム、冷たいよ」
 ディックは少し笑いながら、体を捩って逃れようとするが。その体を捉えたまま、滑らかな肌の感触を楽しむように手をゆっくりと動かしていると・・・時折ディックの可愛らしい唇から声が漏れた。
 本人はおそらくそういう事は意識していないのだろうが、その声がまた・・・なんとも艶っぽい。
 ティムはゆっくりと顔を上げ。
「ね、ディック。キスしていい?」
「え・・・っ!!?」
 返事を聞く前に、目の前の唇に触れ。啄むように、バードキスを繰り返した。
 何度も何度もそうやって触れるだけのキスをしていると。初めは驚いていて固まっていた体から力が抜け・・・ほんの少し開いた唇にそっと舌を侵入させる。
 それには流石に、ディックもティムの肩を押して止めさせようとするが。逃げる舌を捕らえて軽く吸い上げれば、その小さな抵抗もなくなった。
 次第に、互いの足を絡め、股間を押し付けるような動きをし始めたころ。ティムは唇を合わせたまま、ディックをベッドに押し倒し。
「んっ・・・あ・・・」
 ゆっくりと唇を離せば、互いの唇をつなげていた銀糸がぷつりと切れた。
「ティ・・・ム・・・?」
 頬を薄紅色に染め、潤んだ瞳で見上げてくるディックに微笑を返し、耳元に唇を近づけ。
「ディックがあんまりにも可愛いから、悪戯したくなっちゃった」
 そう囁くと、耳朶に柔らかく噛み付いた。

「んっ・・・あっ・・・ティムッ・・・っ・・・」
 耳の後ろや首筋にキスをしながら、パジャマのボタンを外していくと。ディックは顔を赤くしたまま少し体を捩って逃げようとする。
 だが、白い喉をぺろりと軽く舐めただけで、その動きは簡単に封じられた。
「・・・なんだか、小さな子にいけないことしてるみたいだね」
 くすくすと笑いながら言うと、ディックは潤んだ瞳を向けて。
「今の僕とティムじゃ、たいして大きさ変わらないじゃないか・・・んっ・・・」
 少しすねた様に言う姿が、あまりにも可愛らしくて。ティムはさらに悪戯心を擽られ。鎖骨の辺りをべろりと舐めあげた。
 そこで、ディックの白い肌にいくつも赤い痕が残されている事に気づく。

 まぁ、予想はしてたけどね。

 その痕の上をなぞるように、触れるだけのキスを落としていけば。ディックはまるで電気を流されたかのようにびくびくと体を震わせた。
 昨日、あの事件があった後はブルースはディックを離さなかったし、ディックも彼の傍を離れなかった。
 そんな状態の2人が一緒にいて、何も起きないわけがない。
 それを非難するわけではないが、少しディックの体が心配にはなった・・・。
 だからと言って、ここで止める事は出来ないが。
 ディックが身に纏っていたものを全て脱がせると、暗い部屋の中でカーテンの隙間から差し込んでくる月の光に照らされて、薄紅色に色づいた白い体が浮かび上がる。
「ディック、凄くキレイ・・・」
 甘い溜息とともに呟けば、ディックは顔を赤くして目を伏せると。
「そんなじっと見られたら恥ずかしいよ・・・ティムも、脱いで?」
 遠慮がちに、上目遣いにそんな事を言われ。ティムは思わず顔を・・・というか鼻を押さえた。
 ディックはその顔も、言葉も、計算ではないからタチが悪い。そんな彼の前では流石のティムのポーカーフェイスも崩れてしまう。
 だが、そこはバットマンでさえ一目を置くティーンワンダー。
 すぐさま気持ちを落ち着かせ。
「じゃあ、脱がせてくれる?」
 と、ディックの唇に優しくキスを落とした。
 すると、ディックは思いのほか素直に頷くと。そっと手を伸ばし、ティムの着ているパジャマのボタンを外し始める。
 ティムはディックが少しでもボタンを外しやすいようにと、肘を曲げて体を近づけた。
「・・・ティム、ずいぶん逞しくなったんだね・・・」
 ボタンを全て外し終えたディックは、目の前の胸板や腹筋に指を滑らせポツリと呟く。
 自分が大きかった頃は、ティムの事をまだまだ小さな子供だと思っていたが、こうやって自分が小さくなってみると、ずいぶんと逞しく思える。
「そのうち、本当に身長もディックを抜いちゃうからね?」
 くすくすと笑いながら、ティムはパジャマを脱ぎ捨てると自分の胸や腹を撫でる指を捉え、ベッドに縫い付けた。
「ディック・・・」
 そして再び熱い口付けを。
 今度はディックも抵抗する事もなく、互いに舌を絡めあい、貪欲に求め合った。
 唇を離し、今度は自分がしたい場所へキスを落として行き、小さな駒鳥の反応と甘い囀りを楽しむ。
 胸の小さな突起を舐めあげれば、ディックの体は跳ね上がった。
「小さくなっても、ディックはエッチなままなんだね」
 ティムは心底楽しそうに呟いて。蜜を溢れさせ、震えていたその場所をそっと握りこんだ。
「ひあっ!」
 すると、ディックは喜びの悲鳴を上げる。
 ティムはそこを緩く扱きながらぱくりと口に含んだ。
「やっ!んぅっ!!」
 その途端、ディックは無意識に足を閉じてしまい。ティムは頭を思い切り挟まれる形になった。
 だが、ティムは慌てずその足に腕をまわして、ゆっくりと開かせる。
 足を閉じることが出来なくなったディックは、ティムの髪を掻き乱し、背中を反らせ。
「ティムッ!んっ!やぁっ!!もっ・・・っ!!!」
 大きく背を反らせるとほぼ同時に、ディックはティムの口に欲望を放った。
「うっあっ・・・あっ、ひっ・・・」
 ディックが全て出し切った後も、ティムは中に残っている分もすべで吸い尽くすかのようにそこを強く吸い上げた。
「・・・ディック、気持ちよかった?」
 小さく痙攣を繰り返すディックの頭を優しく撫でながら尋ねると、ディックは素直に頷いた。ティムはそれに微笑を返し。
「でも、足りないでしょ?」
 と、さらに後ろでひくつくその場所を指先で軽く突く。
 ディックは体全体で息をしながらも、赤らめた顔をシーツで隠し、再びコクリと頷いた。
「いい子。・・・正直な子には、ご褒美あげないとね・・・」
 ティムはそう言ってディックをうつ伏せにして腰を上げさせる。
 いきなり体を返されたディックは、シーツを握ったままだったせいで上半身だけシーツに包まれる形となり。
「なんだか凄く、イヤラシイね。これ」
「したくてこんな格好になったんじゃないよ・・・っ!ひっ!?」
 上体に巻きついたシーツを外そうともがくが。腰にそっと手を添えられ、あの場所に何か冷たく濡れた、軟らかい物を押し当てられて思わず引きつった声を上げた。
 ソレは、ディックのその狭い入口を解すような動きを見せた後ゆっくりと中に進入してくる。
 ぴちゃぴちゃと濡れた音が聞こえて漸く、ソレがティムの舌だとわかった。
「いっ、あっ・・・ティ、ムッ・・・」
 頭ではこんな恥ずかしい格好はいやだと思っているのに、快楽を覚えている体は更なる快楽を求めて思うように動かない。
「んっ・・・あっ・・・あっ!?」
 暫くすると、ゆっくりと舌が離れていく感覚の直後。今度は細くて長いものがゆっくりと進入してきて、思わず体を強張らせ、その場所をきゅっとキツク締め上げた。
「やっぱり・・・凄く狭いね。このままじゃきついかな・・・?」
 ティムはディックの中に埋め込んだ指をゆるゆると動かした後、ゆっくりと引き抜いた。この時、胎内の異物感がなくなる感覚に、ディックはほっと息をつくと同時に少し残念そうな声を上げてしまった。
「大丈夫、まだ終わらないから安心して?でも、ちょっと待っててね」
 背中に覆いかぶさるようにして、くすくすと笑いながら言ったティムが離れていく気配に。ディックは漸くシーツから頭を出して、そのいく先を目で追った。
 ティムが向かった場所にあったのは、ベッドから少しはなれた場所にある机。机の引き出しから小さな小瓶を取り出すと、ティムは再びベッドへ戻ってきた。
「・・・それ、何?」
 小瓶の蓋を空けて、中身を手の上に出すティムに、ディックが少しおびえた表情で尋ねると。ティムはにやりと笑って。
「ディックも知ってるはずだよ?一回使った事あるし」
 さらに、ディックの腰を支えるようにしてもちあげ。
「ちょっと冷たいかもしれないけど、ガマンしてね?」
「ひゃう!?」
 掌から、とろりとした液体がディックの丸く可愛らしい尻に滴り落ちる。それを塗り広げるように、ティムはディックの尻や太股、ディック自身を撫ではじめた。
「あっ・・・やぁっ・・・ぬるぬるっ、するっ・・・んっ・・・」
「別に変な成分は入ってないよ、ちゃんと調べたしね。ただ滑りを良くするだけの物だから。安心して?」
 背中のくぼみに沿って流れ落ちるそれを追うように、ティムの手がディックの体を這い回り。背後から抱きしめるようにして体を起こし、完全に立ち上がり、固くなった胸の小さなふたつの突起を指先で転がした。
「やっ、んっ・・・な、んで。こんなのっ・・・もって・・・」
 片方の手はそのままに、さらにもう片方の手で自身をやんわりと扱かれ。ディックは体を震わせながら、漸くといった感じに声を出している。
「ん?・・・ほら、こないだ"オモチャ"買ったでしょ?そのときにたくさん付いて来たんだ」
 ティムはそれに事も無げに答えるが、ディックは思わず息を呑んだ。
 それに気付いたティムは、胸を弄っていた手をゆっくりと動かし。
「あれ、使った?」
 耳元で意地悪く囁くと、ディックの体は傍目に分かるほどびくりと反応を返した。
「つ、使ってな・・・ッ!!」
 返事の内容は分かりきっていたので、ティムは気にせずディックのその場所へ、滑りが良くなった指を一本、ゆっくりと突き入れた。
「んひっ!んぅっ・・・あっ・・・っ・・・」
 胎内をかき回すように指を動かして、徐々に本数を増やしていく。
「あうっ!あっ・・・だっ、めッ!またっ・・・ッ!!」
 再びディックの体が小刻みに震えだした頃、ティムはゆっくりとその場所から指を引き抜いた。
「あっ!?・・・な、んで・・・?」
 前に回されていた手も離され、ディックはベッドに体を預けたまま、不思議そうに背後のティムを見つめると。
 ティムは先ほどまでディックの胎内をかき回していた指をぺろりと舐めて。
「どうしたの?・・・欲しいものがあるなら、言ってみて?」
 と、ディックに覆いかぶさり、優しい笑みを浮かべてその耳元で囁いた。
「そっ、んなっ・・・」
 耳元で、興奮し甘く掠れた声で囁かれ。ディックはゾクゾクと体を震わせながらも唇をきゅっと噤む。
「言ってくれないの?僕、ディックに言って欲しいな・・・」
 体を這い回る掌も、明確な刺激を与えようとせず。ゆるゆると腰を揺らして、ディックのその場所に自身をこすり付けているのに、ティムは一向に入れようとしない。
「ねぇ、ディック。教えて?・・・”何”が、欲しいの?」
「うっ・・・あっ・・・」 
 囁かれるたび、体を震わせてはいるが。ディックの中に残るほんの少しの理性がその言葉を言うことを躊躇わせていた。
「いらないの?・・・じゃあ、やめちゃう?」
 すると、ティムはディックの体に触れるのを止め、体を離し、意地悪く笑う。
 もちろんティム自身そんなに余裕があるわけではないが。今のディックの姿があまりにも可愛らしすぎて・・・。
 一言で良いから、自分が欲しいと言ってもらいたかった。

 けど、ディックも結構頑固だから・・・

 だから、もう我慢できない位に焦らして、高ぶらせて。そろそろ堕ちてもいい頃だけど。と、体を離した。
「・・・ティ、ム・・・っ」
 すると、ディックは縋る様にティムを見つめ、小さくその名を呼んで。
「何?」
 ティムはディックから離れたままではあるが、優しく微笑み返事をした。
「・・・・・・ティムの。・・・ちょ、ちょう、だい・・・」
 消え入りそうなほど、小さな声で。ディックは顔を真っ赤にして言うが、ティムはなおも意地悪く。
「僕の"何"が欲しいのかな?」
「っ!!」
 まさか更に聞き返されると思っていなかったディックは、くりっとした瞳を更に大きく見開いて声を失った。
「ねぇ、ディック・・・教えて?」
 そんなディックに優しく微笑みかけたまま、ティムは再び手を伸ばす。
 うつ伏せになり、上体を少しだけ起こして後ろを振り向くようにしてティムを見つめていたディックの太股や脇腹に手を滑らせ、まるで羽根で触れるかのようにやわらかく撫で上げた。
「うっ、あっ・・・っ!」
 すでに十分追い上げられているディックの体は、たったそれだけの刺激にも甘い痺れをもたらした。だが、決定的なものが足りない。
 耐え切れなくなったディックは、体を捻り、ティムに正面から抱きついて。
「ティム、おねがっ・・・もう、我慢できないよ・・・」
 目に涙を浮かべ、ティムの顔中にキスをして。
「お願い・・・ティムの、ペニスで僕の中、かき回して・・・」
 顔を真っ赤にしながらの懇願に、ティムは満面の笑みを浮かべ。深く、情熱的なキスをして。
「やっと言ってくれたね・・・嬉しいよ」
 ディックの膝裏に腕を回し、持ち上げ。その場所に自身をあてがい。
「・・・入れるよ?」
「ん・・・はやくっ・・・あっ!・・・ひっ!・・・あっ!あぁっ!!」
 ティムがゆっくりと腰を進める速度に合わせるように、ディックの唇からは甘い悲鳴が漏れ。あと少しで全てが納まりきる。という所で、ティムは軽く腰を突き上げた。
 その瞬間、ディックは弓なりに背を反らせ、白濁を飛ばす。それと同時に、ディックのその場所が急激に収縮し、ティム自身を締め上げる。
 それでもティムは、その波をなんとかやり過ごし。
「入れただけで、イッちゃったんだ。ディック。ほんとにヤラシイね」
 肩で荒く息をしながらも、意地悪な笑みを浮かべてゆっくりと腰を引く。
 と、
「っ!ひっ!?あっ!まっ!!」
「んっ・・・どうした、の・・・?」
 あまりにも必死に、動きを止めさせようとするので。ティムはどうにか衝動を抑え込み、動きを止めると優しく尋ねる。
「うっ・・・あっ・・・な、なかっ・・・ティムの、おっき、くて。いっぱい、でっ・・・くるしっ・・・ひああっ!!!」
 それを聴いて、流石のティムも衝動を抑えることができなくなった。
 切なげな顔で、涙を瞳いっぱいに浮かべ、そんな事を言われて。何も感じない男がいるわけがない。
 これでは、ブルースやあの馬鹿が溺れるのも無理はない・・・そんな事を頭の端で考えてはいたが、それ以上に。
「うくっ!あっ!ティッ!ああっ!」
 自分の下でボロボロと大粒の涙を流しながらも甘く囀る存在が可愛くて、愛しくて。

 もっと、泣かせたい。泣き顔を見たい・・・。

 そんな衝動が湧き上がってくる中。ティムはディックの胎内に己の欲望を吐き出していた。
 それでも、一向に治まる気配の無い自身に苦笑し。顔を涙と涎でぐしょぐしょにしつつも、恍惚とした笑みを浮かべているディックを抱きしめ。
 再びゆっくりと腰を揺らし始めた。
 本当に、自分も人のことが言えないくらいケダモノだ。






 どれくらい時間がたったのだろうか。
 ディックが目を覚ました時、まだ外は暗かったが・・・あれだけドロドロに汚したシーツや体はいつの間にかキレイになっていて。
 ティムも隣で目を瞑っていた。
 まさか、夢でも見ていたのだろうかと一瞬思ったが。すぐに自分もティムも裸のままだと言う事と。さらに自分が枕にしていたのはティムの腕だという事に気が付き、慌ててそこをどこうとした。
「どうしたの?ディック、辛い?」
 だが、そう声をかけられると同時に頭を撫でられ、身動きが取れなくなる。
「あ・・・う・・・ううん、平気・・・」
 歯切れは悪かったが、そう素直に答えると。ティムは心底安心した、というような笑みを浮かべて。
「結構、無茶させちゃったから・・・良かった・・・」
 と、ディックの額にキスをした。
 それからも、ティムはディックを離そうとせずに、頭を優しく撫でてくるので。
「ティム。腕、しびれちゃうよ?」
 と言うものの、ティムは、
「大丈夫だよ。ディックが眠ったら離れるから・・・」
 と微笑み。
「あ、もしかして首、痛い?」
「それは大丈夫だけど・・・」
「じゃあ、もう少しこうさせてて」
 そう言われては、ディックに離れる理由もなくなってしまった。
 そうやって、優しく頭を撫でられていると。疲れているせいもあって、次第にディックは深い眠りに落ちていく。
 完全に寝入ったことを確認して、ティムはその柔らかな唇に触れるだけのキスをして、自分も眠るために静かに目を閉じた。



 翌朝、いつも以上にブルースはディックの傍を離れなかった。
 原因はまぁ、言わずもがなで・・・。
 昨夜、ティムが自室に戻る前に呼び止められた時。バットマンは仕事の話の合間に、それとなく釘をさしてきた。それは、勘が良い者でなければ気付かないような酷く遠まわしな言い方ではあったけれど。
 ティムはもちろんそれに気付いていたが、あえて気付いていないふりをした。
 こんなチャンスがまたやってくるなんて事はまずありえないと考えていい。だから、逃がすつもりはなかった。

 たまには、僕も良い思いをしたって・・・いいでしょう?



END

                                 2009/04/20














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