■Drug Queen■



「あ、お帰り〜」
 ナイトウィングとしてその日の活動を終え、部屋に帰ってきたディックにかけられた声。
「・・・・・・」
 それを聞いて、疲れているとはいえその気配に気づかなかった自分自身と、人の部屋で我が物顔に寛いでいるレッドフード=ジェイソン・トッドに脱力し。大きくため息をついた。

 とにかく今は、シャワーを浴びたい。
 そう思っていたナイトウィングが汚れたコスチュームを脱ぎ始めると。
「脱ぎ辛そうだな、手伝おうか?」
 それを見ていたジェイソンがおどけて後ろから抱き着いてきた。
「っ!?」
 その瞬間、ナイトウィングの体がびくりとはねる。
「・・・?どうした?」
「な、なんでもない・・・と、ともかく、いらん世話だ」
 背中に張り付いたまま不思議そうに尋ねてくるジェイソンを、ナイトウィングは引き剥がし。
「今日はお前をかまってやる余裕はないぞ」
 だから帰れ。と、コスチュームを脱ぎ散らかしてバスルームへと入っていった。



 冷えた体には少し熱いくらいのお湯を頭から被り、目の前のタイルに額を付ける。
 吐き気はないが、思考がはっきりとしない。

 ああ・・・なんだか頭がぼんやりとする・・・酒に酔った時みたいだ。

 目を閉じて、ゆっくりと息を吐く。背中を叩くお湯が心地良い。

 やっぱり・・・あの時の・・・

 つい先ほど、追い詰めて警察に引き渡した子悪党。
 最後のあがきと暴れだし、そばに置いてあったさまざまなものを投げつけてきた。
 もちろん、それに当たるような間抜けな事はなかったが・・・投げられたペットボトルの蓋が外れ、こぼれ出た中身までは避ける事ができなかった。
 ペットボトルの中身を頭から被りはしたものの。その時は何事もなく子悪党を捕まえ、警察に突き出す事ができた。
 後で投げつけられたペットボトルのラベルを見たが。海外の物の様で、ラベルに書いてある商品名がなんとなくわかる程度だった。
 だが、そのときもまだ体に何か変化が起こる事もなく・・・ただのジュースだろう。と思っていたのだが・・・

 あのジュース自体が、何かの薬だったのかな・・・後で調べないと・・・

 努めて冷静に、現状を分析しようと思考を動かすが。まるで、思考と感覚が切り離されたかのように頭で考えている事を無視し、体の中心に熱が集まる。
 このままではまともな思考も奪われてしまう・・・と、ディックは何もしていないのに立ち上がりかけているソコへ手を伸ばした。
「んっあっ!」
 そっと握りこむと、それだけで足ががくがくと震え立っているのもやっとな状況になる。握っただけでそうなのだから、擦ったりなんてしたらどうなるか・・・
 今まで感じた事のない強い感覚に、快楽よりも恐怖が勝り、手を動かせずにいると。
「なに?もう終わり?」
 不意に後ろから声をかけられ、驚いて勢いよく振り向く。
「っ!?」
 振り向いた先には、ビニールのカーテンを開けてこちらを見ているジェイソンの姿。
 にやりと笑ってシャツを脱ぎ、ゆっくりと近づいてくるジェイソンから視線をはずせずに、追い詰められるままにディックはぺたりとバスルームの壁のタイルに背中を付けた。
「お・・・おまっ・・・帰った・・・」
「帰れって言われたくらいで、俺が帰ると思う?」
 ジェイソンは悪びれる風もなく言い、出しっぱなしだったシャワーを止めるとディックの顔の横に手をついて。
「なんだよ、溜まってんなら言ってくれりゃいいのに」
「こ、これはっ、ちがっ・・・ひゃぅ!!」
 ディックが抵抗する前に、ジェイソンは彼のソコをやんわりと握りこみ、軽く扱き上げる。
「あっ!やっ!!あっあ・・・っ!!!」
 たったそれだけの事で、ディックはジェイソンの手の中で果ててしまった。
「・・・そんな溜まって・・・っ!?」
 さすがに少し早すぎやしないか?そう思っていたジェイソンは、少しからかうつもりで手の中の物を舐めとり飲み下してそう言おうとして、固まった。
 目の前でディックがボロボロと大粒の涙を流して泣いていたのだ。
「えっ!?ちょっ!!そ、そんなヤだったのか!!??」
 それにはさすがのジェイソンも慌てふためき、おろおろとしてディックを抱きしめ優しく頭や背中を撫でた。自分自身これほど嫌われていたのかと相当ショックを受けているのだが。いつも笑っているディックが泣いている姿など初めて見たせいで、それ以上に動揺をしていた。
「・・・じゃな・・・」
「ん?」
 しばらくの間しゃくりあげていたディックが不意に小さく呟いて、ジェイソンは優しく聞き返した。
「こんなの・・・僕じゃ・・・ない・・・」

 詳しく聞いてみると・・・
 仕事中にかぶってしまった液体せいで体が言うことをきいてくれず・・・勝手に反応してしまうのが怖くて泣いてしまったのだと・・・

「え・・・じゃあ、俺が嫌いで泣いたんじゃ・・・」
「・・・泣くほど嫌いだったら、とっくに放り出してる」
 幼い子供のように泣いてしまった事がよほど恥ずかしかったのか。ディックは顔を赤らめ涙を拭い。
「とにかく、今の僕は普通じゃない。だから・・・」
 よく見れば、ディックの中心は再び熱を持ち始めている。どうやらディックが泣いている時にジェイソンがとった行動が、余計に彼を煽ってしまっていたようで。
「帰れって?こんなオイシイ状況を目の前にしてお預けはないぜ、ディッキー」
「えっ?あっ!ジェイソン!!」
 胸に両手をついて体を離そうとするディックを、ジェイソンはひょいと抱き上げ。
「さっきだって一人じゃなんも出来てなかったじゃん。俺が手伝ってやるよ」
 と、嬉しそうにキスをした。



 バスルームから寝室まで、抱えられたまま運ばれて。 
「うわっ!」
 そのままどさりとベッドに下ろされる。
「ジェイソンおまっ!?」
 そんな乱暴な行動に反発しようと顔を上げると、欲望を隠しもしない男が見下ろしていて。思わずディックは息をのんだ。
「ディッキー、すげぇ色っぽい」
 シャワールームから、体を拭かずにここまで運んできたので、ベッドに横たわりジェイソンを見上げているディックは髪も体も濡れたままだ。
 ディックが被った液体がなんなのか、いまだにわかってはいないが。彼の反応から多少なりとも"媚薬"の効果がある成分が含まれていたのだろう。それの影響か、ディックの体は薄紅色に染まり、誘っているようだった。
 ジェイソンの思考の中では、先ほどまでシャワーを浴びていたから・・・という事実は横に置かれているようだ。
「ちょ・・・」
 ベルトを外しながらのしかかってくるジェイソンに、ディックは慌てた。
 今、自分は普段よりも感覚が鋭くなっていて、ちょっとした刺激でもすぐに達してしまいそうなのに・・・こんな状態でジェイソンに好き勝手されたら、本気で壊れてしまう・・・!!
 先ほど一度達したお陰か、体はいまだに熱くほてってはいるが多少なりとも物を考える思考が戻っていたディックはジェイソンに気づかれないように枕の下に手を入れ、とある物を掴んだ。
 そして。
「・・・ジェイソン・・・」
 なるべく情感たっぷりに、色っぽく。ジェイソンの欲情を煽るように名前を呼ぶ。
「・・・っ」
 思惑通り、ジェイソンは息をのみ動きを止めた。その一瞬の隙を突いて。
「ごめん!」
「へ?」
 次の瞬間にはすでに、ディックとジェイソンの位置は入れ替わり。ガシャンと金属のこすれる音が聞こえた。
「え・・・?」
 いまだに自分の身に何が起こったのか理解できていないのか、ジェイソンは目をぱちくりさせている。
「・・・ごめんな、ジェイソン。けど・・・僕も、怖いんだ・・・」
 ディックは仰向けになっているジェイソン上に跨ってその頬を撫で優しく囁く。そこで漸く、ジェイソンは視線を己の頭上へ動かし、現状を理解した。
 ジェイソンの両手は手錠をかけられ、頭上にあるベッドの柵に通され、固定されていたのだ。
「ちょ・・・ディック、そりゃねぇよ・・・」
 それに気づいたジェイソンは、おもちゃを取り上げられた犬のような顔をして情けない声を出す。
「だって・・・お前、こうでもしないと結構めちゃくちゃするじゃないか・・・あの時みたいに・・・」
 それに対して、ディックはそう抗議するものの・・・自分でも"あの時"の事を思い出して顔を赤らめ視線をそらした。
「あのとき・・・?」
 始め、ジェイソンはディックが何の事を言っているのかわからなかったが。すぐにどの事かを理解し。
「A-HA.なんだよディッキー、やっぱあのときの事忘れらんなかったのか?」
 顔を赤くして恥ずかしそうにしているディックの様子に、ジェイソンはニヤリと笑い意地悪く言うが。
「そりゃ、あれだけ酷い事されたらな」
 むっとしたディックに鼻の頭をぺしっと指先で弾かれる。そしてふと、何かを思いついたのか。ディックはにっこりと微笑み。
「・・・ちょうど良いや。あの時のお返し・・・たっぷりしてやるよ」
 己の唇をぺろりと舐めてそう言った。
「・・・ッ」
 それを聞いてジェイソンはゴクリと喉を鳴らす。
 その言葉だけでなく、自分を見下ろすその表情も、指の動きも。いつものディックの優しい雰囲気からかけ離れているものの。ジェイソンの欲情を十分に煽り立ててくれていた。

 ああ。こういうのも悪くない。

 上から落ちてくる口付けに答えながら、ジェイソンはニヤリと笑った。
「んっ・・・ディック・・・っ」
 頬、耳朶、首筋、胸・・・と、キスを落としながら優しく与えられる愛撫に、ジェイソンはじれったさを感じ身を捩る。胸で存在を主張している小さな突起にキスをすると、その体がびくりとはねて。ディックは楽しそうに小さく笑った。
「なんだ、お前もここで感じるんじゃないか」
 そして、そこをべろりと舐め上げて口に含む。もう片方も指先ではじくようにすると、ジェイソンはたまらず喉をそらせた。
「くっ・・・おっ・・・」
 だが、彼は胸への愛撫だけでそれ程感じているわけではなく・・・無意識の内に腰を揺らすディックのそこが、ちょうどインナーの中で窮屈そうにしているジェイソン自身と擦れ合い。

 ああ、くそっ!!そのケツ掴んで一気に突っ込みてぇ・・・!!

 そんな事を考えていれば、自然と腰も動き。
「んっ、あっ・・・」
 下半身を突き上げるようにして動かすジェイソンに押し上げられ、ディックが顔を上げる。
「何・・・?入れたい、の?」
「うくっ!」
 ニヤリと笑ってジェイソンのソコをインナーの上からやんわりと握りこむと、ジェイソンはびくりと身を強張らせた。
「けど、まだダメ。入れたいなら、最初にやらなきゃいけない事。あっただろ?」
 ジェイソンの唇を指でなぞり、そこに触れるか触れないかの距離で囁くと、すっと体を離し。
「ほら、舐めて?」
 体を反転させて、ジェイソンの眼前にその場所を突き出した。
「あ・・・」
 ジェイソンは言われるがまま、ソコに舌を伸ばし舐め始める。
「ひあっ!あっ!・・・んっ!・・・いい子、だね・・・」
 その舌の動きにディックは背を反らせ甘く囀り、
「ご褒美、あげないと・・・ね」
 ジェイソンの肌に指を滑らせ、そのままインナーごとジーンズを脱がせると。布地に押さえつけられていたジェイソンのソレが勢いよく立ち上がる。
「やっぱり、お前の・・・大きいな・・・」
 ディックは目の前に現れた大きなソレに手を添えて、うっとりと眺め何度もキスをして。先端から溢れ出る蜜を舐め取るように舌を這わせ、ゆっくりと口に含んだ。
「うぉっ!?ディッ・・・っ、それ、やばっ・・・!!」
 途端、ジェイソンはディックのソコから唇を離し声を上げ、太股を戦慄かせた。
 以前ディックに口でして貰ったときは、ディックの動きも制限されていた上に、自分もすぐに果ててしまっていたのでそれほどこの行為を楽しんではいなかったのだが。
 今、ディックの熱い口内に自身を包み込まれて。ジェイソンは激しく身悶えた。

 やべぇ、なんだこれ!すげぇイイ・・・っ!!

 ジェイソン自身を口に含んだまま唇を上下させると、そこはさらに熱く、硬くなる。そんな変化を楽しむように、ディックは時折そこから唇を離して舌先で舐めあげ、手で優しく扱きあげる。
「あっ!あっ!!ディック!!俺ッ!!」
「んっ・・・イきそう?」
 がくがくと足を震わせるジェイソンにディックは優しい声色で。
「イって、いいよ・・・」
 そう囁くと、ジェイソン自身を喉の奥まで咥え込み強く吸い上げた。
「うあっ!あああ!!!」
 その強烈な快感に、ジェイソンは抵抗する暇もなく喉を仰け反らせてディックの喉の奥へ欲望を吐き出した。
「んぐッ・・・んっ・・・ん・・・」
 ディックはそれを嫌がりもせず受け止め、口の中のジェイソン自身に白濁を塗りつけるようにゆっくりと唇を離し、自分の指を一本咥え、ジェイソン自身にした事と同じようにして引き抜くと・・・
「ひあっ!?」
 達した余韻に浸り、肩で荒く息をしていたジェイソンが急に情けない声を上げる。
「ちょ!ディッ、クっ!?うっ、あっ!?」
 慌てて身を捩り、逃げようとするジェイソンの下半身をしっかりと押さえ込みながら、ディックは先ほど自分の唾液とジェイソンの吐き出したモノで濡らした指をゆっくりと"その場所"へ埋め込んでいた。
 いきなりの異物感に体を強張らせるジェイソンに、ディックは先ほどと変わらぬ優しい声で。
「こら、暴れるなよ」
 と、中に埋め込んだ指をぐりっと動かし、ある一点を突き上げた。
「あぁっ!?」
 その途端、ジェイソンの体が跳ね上がり、先ほど達して硬さを失っていたジェイソン自信も徐々に硬度を取り戻し始め。
「・・・ここ、気持ちいいだろ・・・?」
 ディックはそこを執拗に攻められ、ジェイソンはあられもない声を上げ体を震わせる。
「ディック!ディック・・・!!」
「・・・このまま、僕の入れてあげようか・・・?」
 完全に立ち上がったジェイソン自身にキスをしてディックが言うと、ジェイソンは快楽にうっすらと涙を浮かべつつ、首を横に振った。
「いっ、やだ。俺、ディックのっ、中、に。入りたッい・・・うぁっ!?」
 それを聞いて、ディックはジェイソンの中に埋め込んでいた指をゆっくりと引き抜くと。体勢を変え、ジェイソンの頬を撫で、瞼にキスを落とし。
「泣くなよ・・・そんなに、僕の中に・・・入りたいの?」
 苦笑して、優しく頭を撫でると。ジェイソンはこくこくと何度も頷いた。
「フフ・・・しょうがないなぁ」
 ディックはそんなジェイソンの様子に、満足そうに微笑むと。彼の胸や腹にキスを落としながら体をずらしていき・・・
「うっ・・・あっ・・・」
 しっかりと立ち上がるジェイソン自身に、自身の奥まったその場所を擦り付ける様に腰を揺らし。
「ディッ、ク・・・っ、焦らす、なよぉ・・・」
「お前はっ、堪え性が・・・ないね・・・」
 情けない声を出し、腰を突き出してディックの中に納まろうとするジェイソンの腹を押さえつけ、ディックはジェイソン自身に手を添えて。
「ほら・・・お前のが・・・入って・・・」
 ゆっくりと腰を落とし。その、大きなモノを胎内へと導いていった。
「あっ・・・はっ・・・ああああ・・・!」
 ジェイソンの腹の上に手を置いて跨り、完全に腰を落としきったディックは。その白い喉を反らせて恍惚とした笑みを浮かべる。
「・・・やっぱ、り、お前の。おっ、き・・・あぁっ!!」
 己の唇を舐めながら、腹の中のモノを味わうように身を震わせていると。不意に突き上げられて声を上げる。
「ディック・・・我慢、できねぇ・・・」
 額に汗を浮かべ、切ない表情で見上げてくるジェイソンは。そう言いながら腰を揺らす。初めは揺さぶられるままに声を上げていたディックだったが、ジェイソンが少し動きを止めた隙にゆっくりと体を前に倒し。
「くあっ!?」
 意識してソコを締め上げニヤリと笑う。
「そっ・・・んな、がっつくな・・・よ・・・」
 急に自身を締め上げられ、耐えるようにきつく目を瞑るジェイソンの瞼にキスをして。ディックはゆっくりと腰を揺らし始めた。
「セックスは、ただ、あっ・・・がむしゃら、にっんっ!・・・腰を振る、だけじゃ・・・無いんだよ・・・?」
 自分の上で踊っているように腰をくねらせるディックに、ジェイソンはたまらず腰を突き上げるが体重をかけて押さえつけられ。
「あっ!・・・すげっ・・・またっ・・・」
 ディックにゆるく、きつく締め上げられ。ジェイソンは再び絶頂を迎えようとしていたが。
「いきそ・・・?あ!んっ、でもっ・・・も、少し、我慢・・・ねっ・・・っ」
「あぐっ!?」
 痛いくらいに締め付けられ、ジェイソンが悲鳴を上げる。ディックは涙目になるジェイソンに口付けてから、ゆっくりと体を後ろへ倒し、片手をベッドについて。
 もう片方の掌をべろりと舐め上げ、その手で自身をやんわりと握りこみ。ジェイソンに見せ付けるように、ソコを扱き出した。
「あひっ!あっ!いっ、しょにっ・・・イこっ?・・・んぅっ!!」
「うっおっ・・・!っ、ディック!ディッ、クッ・・・!!!」
 そんな行為を見せ付けられ、ジェイソンもディックが自身を扱くリズムに合わせ、下から突き上げ。
「あっ!もっ!!いっ!!イクッ!!!」
「うぐっ!!」
 ディックのあられもない声に煽られ、ジェイソンがまずディックの中で果て。それに押し出されるように、ディックも自身から大量の欲望を吐き出し、ジェイソンの胸や腹を白く汚した。

「あっは・・・すっげ・・・」
 暫くの間、二人は肩で荒く息をしていたが。ジェイソンがそう呟くと、ディックもゆっくりと体を動かしジェイソンの上に覆いかぶさるようにして。
「よかった・・・だろ?」
 とキスをしてきた。
「ああ、最高だね」
 と、そのキスに答えて言ったジェイソンの。拘束され、頭上に投げ出したままだった手に・・・何か固く、冷たい物が当たる。
 手探りでそれの形を確かめたジェイソンは内心ほくそ笑んだ。
「まだ・・・いける、だろ?」
 ジェイソンが頭上で何やらごそごそとしている事に気づいていないディックは、ジェイソンに小さなキスを何度も落としながらまだ中に納まっているジェイソン自身をゆるく締め上げるように、互いの体の間にある自身をこすり付ける様に腰を揺らし、甘い声を出す。
「ああ、もちろん・・・けどっ」
「えっ!?ひあっ!!」
 それにニヤリと笑って答えたジェイソンは、腹筋を使って一気に体を起こすとディックの腰を抱えグイッと突き上げた。
「な、なにっ!?なんっでっ!!?」
 拘束していたはずのジェイソンが自由になっている事に驚いて、さらに突き上げられて思考がぐちゃぐちゃになっているディックにキスをすると。
 ジェイソンは右手にはめたままだった手錠の片方をディックの左手にはめ。
「これ、な〜んだ」
 と、半場放心状態のディックの目の前に先ほど手にしたものを出した。
「あ・・・?っ!?」
 一瞬何を出されたのかわかっていなかったディックだったが、すぐにそれが"手錠の鍵"だと理解し、奪い取ろうと手を伸ばす。が、
「ダメじゃんディッキー、こんな近くに鍵置いてちゃぁ」
 と、ジェイソンはからかうようにその鍵をベッドサイドへ落とすと。
「ひあっ!!」
 繋がったまま、ディックをベッドへ押し倒し。
「さっきまで散々楽しませてもらったからな・・・リベンジといこうか」
 ディックの顔の横に手をついて、ニヤリと笑っていった。
「・・・・・・」
 普段のディックなら、ここで怯えた顔で止めろと言うのだろうが・・・今は、いつもと状況が違う。
 ディックは誘うように妖しく微笑み、自ら足を大きく広げ。
「Okey,Come-on boy.」
 そんなディックの様子にジェイソンはニヤリと笑い、二人は噛み付くような激しいキスを合図に、互いを貪りあった。






「お〜い、ディッキー。いつまで拗ねてんだよ・・・」
 ベッドの上で裸のまま横になり、頬杖をついているジェイソンが、同じくベッドの上で頭からシーツを被り丸くなっているディックを軽くゆすり、声をかける。
「違うもん・・・あんなの僕じゃないもん・・・」
 シーツの中からは、くぐもった声と時折鼻をすする音が聞こえてきている。そんな状態が続いていたのだが、ジェイソンは軽くため息をついて。
「わかってるよ、ありゃ薬のせいだろ?」
 と、ディックの背中(と思われるシーツの丸まり)を撫でながら優しく声をかけると。漸くディックはもそりとシーツから顔を出した。
「あれは、僕じゃない・・・」
「ああ、そうだな」
 泣いたせいで目と鼻を赤くしてそう呟くディックの頭を撫でて、ジェイソンは苦笑する。なんだかいつもと立場が逆だ。
「・・・ところで・・・アンタがかぶったって液体。ペットボトルに入ってたんだよな?」
 そうやって、漸くディックが落ち着き始めた頃。ジェイソンは思い出したかのようにディックに尋ねる。
「名前わかるか?」
「・・・なんで、そんな事聞くんだ?」
「あ、いや・・・俺が知ってる物かもしれねぇし・・・」
 まさか本人を目の前に、又それを飲んで相手をして欲しいからなんて事は言えず。軽く言葉を濁すがディックは素直にそれに答えた。
「えっと・・・見た事のない文字でかかれてたからいまいちわかってないんだけど。"ソフォン"って言うのはなんとなく読めた」
「・・・ドギツイ赤と青いラベルの?」
「ああ、うん。ボトルの形は普通のジュースと変わらなかったけど・・・」
 それを聞いて、ジェイソンは頭をがりがりとかいた。どうやら、思い当たるものがあったらしい。
「知ってるのか?」
「あ〜・・・それな、普通はカクテルとかに混ぜるもんなんだけど・・・男が飲むとアソコと気持ちを大きくさせる作用があるらしい。もちろん女にも同等の効果があるって。新人のストリッパーとかに飲ませるとイイらしいぜ?」
 すらすらとそれがどのようなものかを説明するジェイソンに、ディックがいぶかしんだ視線を向けると。
「マフィアの下っ端連中に流行ってんだよ。こないだそれ持ってる奴吊るしてさ。何かに使えるかとついでに数本貰った」
 と、こともなげに言われ、ディックは後ずさる。
「何のためにそんなもの・・・」
「言ったろ?"何かに使える"かな〜?って・・・欲しい?」
「いらない!!持ってくるなよ!!?絶対持ってくるなよ!!??」
 腰を抱かれていやらしい笑みを浮かべて言われ、ディックは精一杯その顔を押しのけて叫んだ。
「あんな状態、二度とごめんだ!!」






 後日、レッドフードはバットマンにとあるボトルを投げ渡し。
「それ、ディッキーに飲ませると面白い事になるぜ」
 とだけ言って去っていった。
 バットマンはボトルを持ち帰ると、中身の成分分析をし・・・すぐにそれが"何"であるかを突き止めた。
 もちろんこんなものをディックに飲ませられるか・・・とすぐにケイブの深い谷底へ捨てようとしたのだが・・・
 レッドフード=ジェイソンが言った言葉の意味が気になり・・・



 バットケイブのミュージアム。そこには今まで戦ったヴィラン達に関係する物や、思い出の品が飾られている。
 その中に、こっそりと隠すように置かれているドギツイ赤と青のラベルのボトルの存在に・・・今のところ、気づいている者はいない。



END

                                 2008/12/01














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