■Gaze■



 僕がソレに気が付いたのは・・・
 彼が帰ってきてしばらくしてからの事だ。



 それは、酷い嵐の夜だった。
 なんだかその夜は眠れなくて、広いベッドの上で何度も寝返りを打ったり頭までシーツをかぶったりしたけどダメで。僕はため息をついてベッドから降りて部屋を出た。
 時折雷が照らす廊下を歩く。流石にこの嵐ではバットマンももう帰って来ているだろう(僕は明日は学校でテストがあるからと先に帰されたんだ)と思って、バットケイブに向かった・・・
 んだけど・・・

 廊下を歩いている途中で、とある部屋のドアが少しだけ開いていることに気が付いた。
 ブルースの部屋だ・・・
 やっぱり、帰ってきてたんだ!と僕はその部屋に近づいて、妙な声に気が付いた。
 その声は僕が幼い頃から憧れている。尊敬する兄弟子、初代ロビンの・・・ディックの声。だけど、普通の声じゃない。
 僕はそういった類の声を聞いたことがあった。もちろん、生ではないけれど。
 クラスメイトの家に遊びに行ったとき。良いものがある、とクローゼットの奥から取り出されたDVD。その中で、ブロンドヘアーのグラマラスな女性が上げていた声とよく似た声が、部屋の中から聞こえている。
 まるで耳の真横に心臓があるかのように煩いほど鼓動が聞こえ、痛いくらい高鳴る。
 僕はそっと、ドアの隙間から部屋の中を覗いた。



「うっぁっ・・・・ブルース・・・」
 部屋の中は、まるで別の世界だった。
 ブルースに組み敷かれたディックが、いつもの彼からは想像も出来ないような甘い声でブルースの名前を呼んで。その首に腕を回し、引き寄せ、キスをする。
 ブルースもいつもの厳格な彼と同一人物とは思えない優しい顔で、それに答えている。
 そして、今度はディックがブルースを押し倒し・・・
「っ!!?」
 僕は自分の目の前で起こっている事が信じられなかった。
 ブルースの大きなモノが、ディックの体内にゆっくりと入っていく。あんなに大きなものがあんな狭いところに入る、という事も信じられなかったのだけど。それにも増して、ディックが上げる声が痛みのために上がっているものではないと言うことに驚いた。

 痛く・・・ないのかな・・・・・・?

 すべてが僕の知っている事とはかけ離れすぎていて、本当に、違う世界のものを見ている気分だった。
 だけど・・・僕はそんな二人を見ても、嫌だとか、汚らわしいとか。そんな感情はわいてこなかった。
 むしろ・・・そんな二人を見て、ありえないくらい僕自身が興奮していた・・・
 クラスメイトの家で見たDVDのブロンド美女よりも、ディックのほうがずっとセクシーに思えて、
「・・・んっ・・・」
 僕は大きくなってしまった僕のソコに触れた。途端、漏れてしまった声に慌てて自分で自分の口を塞いだ。
 本当に小さな声だったとは思うけど、僕自身はとても大きな声を出してしまったような気がして。ばれたかな?と恐る恐る部屋の中を見てみたけど、中の二人はまったくそんな素振りを見せなくて、ホッとした様な、残念な様な・・・
 ん?ホッとした、はともかく。どうして残念?
 僕は自分の中に浮かんだ感情に自問して、そこでようやく、僕自身の気持ちに気づいた。

 そこからはもう、僕は自分の欲望に素直に動いた。
 立ち上がりかけている自分自身に手を添えて、部屋の中で腰を振るディックの動きに合わせて手を動かす。後ろは、流石に怖いから手は出さなかったけど・・・
 ブルースの声と、ディックの声。そのどちらも、僕の気持ちを高ぶらせてくれて。
「あっあっ・・・・!!!!」
 僕が僕自身の手で達したとほぼ同じくらいに、部屋の中で大きな声を上げてディックはびくびくと震え、その下でブルースも眉間に皺を寄せてディックの腰をしっかりと支えていた。二人もいったみたいだ。

 僕はそっと部屋の前を離れ、トイレで手を洗って自分の部屋に戻る。
 ベッドの中に潜り込んでも、まだ胸のどきどきは収まっていなかった。


 そう、僕は「ブルースとディック」が好きなんだ。どちらか片方ではなく、二人とも。
 しかも、二人の仲が良ければ良いほど、僕自身が嬉しい。
 だから、この夜僕は二人の行為に酷く興奮した。
 贅沢を言うならば。そんな仲の良い二人の関係に、僕も混ぜてもらいたいのだけれど・・・

 その日からも、僕は何度か二人の行為を目撃するようになった。と、言うよりも、自分から見に行った。
 もちろん、見つかるようなへまはしないけど。見つかったらそれはそれで、まぜてもらえるように仕向けるだけだし・・・



 けど、昨日は流石に驚いた。
 まだ昼間だったし、今夜はブルースに仕事があるって聞いてたから。
 だから、ケイブに入ったとき、はじめは違和感に気づかなかったんだ。けど、しばらくしてバットマンの様子もおかしいし、ナイトウィングもいないし・・・で、ピンときたわけ。
 あの状況じゃ、誰でもわかると思うんだけど・・・まぁ、久しぶりなんだし邪魔しちゃ悪いよね?
 僕は何も気づかないふりをして、その時はそのままバットケイブを後にした。


 夜、ディックが今日は泊まるって言って部屋に行った数十分後にブルースが返ってきた。
 僕は自然に、今日はディックが泊まることを伝えると。ブルースはアルフレッドに上着を渡して、今日はもう疲れたから。と部屋に上がっていった。
 その後は、言わなくてもわかるよね?
 流石にドアが開いてるなんてラッキーな事は何度もおきないから、今回は部屋の前で聞いてるだけだったんだけどさ・・・
 そのうち、盗聴器でも仕掛けてみようかな?もしくは、カメラ?けどバレちゃったら後が厄介だよね。
 やっぱり、自分でこっそり撮影するしかないかなぁ・・・



END

                                 2008/09/11














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